人財育成への取り組み

2018年に実施した従業員エンゲージメント・サーベイをきっかけに、従業員の声を深く聞く取り組みを行い、私たちを一つに束ねる価値観としてコア・バリュー「INTEGRITY」を新たに導入しました。2019年夏からは対話型のINTEGRITYワークショップを全従業員に開始。日常業務にコア・バリューを取り入れ、企業風土の変革を促すこの研修はコロナ感染を避けながら2020年度末までかかりました。ただ、こうした土台づくりにより、社内コミュニケーションの浸透とアイデア創出の場の広がりを得るという副次効果がありました。2022年度は2021年度に続き、社内文化変革の次の一歩として組織をけん引する「リーダー」育成、また個々の従業員の成長に焦点を当てた人財育成に取り組みました。

リーダーシップ研修

予測不可能な時代では、リーダーは様々な場面でどのようにスキル・専門性を効果的に発揮していくかについて理解し、その判断をしていかなくてはなりません。アドバンテストでは、リーダーシップのあり方を4つ(リーダー、マネージャー、コーチ、エキスパート)に分け、グローバルで1,200名を超える全管理職に対し「Leading with INTEGRITY」(INTEGRITYのあるリーダーシップ)ワークショップを実施し、リーダーの能力開発および強化を行いました。この研修は様々な組織全体のリーダー同士が国や組織をまたいで同じワークショップに参加し、2人組(バディー)を形成し、約5か月間それぞれの能力開発の目標に対する進捗や互いの悩みを共有する中で、刺激を受けながら多様性も学ぶ場となっています。

リーダーシップの4つのあり方

リーダー:
自らビジョン、ミッションを掲げ、方向性を示し、周囲にインスピレーションを与えること。
マネージャー:
目標達成のためにチームを組織し、オーケストラの指揮者のように率いること。そしてコンプライアンスを遵守すること。
コーチ:
周りの人に学習を促し、勇気づけることにより、可能性・パフォーマンスを最大限に引き出すこと。
エキスパート:
自分の専門知識を提供し、周囲を教育し手助けすること。

サクセッションに向けた活動

将来会社をマネジメントする人財をプールしていくため、2021年度より管理職の中から選抜されたメンバーに対し経営、財務、リベラルアーツといったカリキュラムを含む「タレントマネジメントプログラム」を9か月間実施しました。22年度は対象をグローバルに広げ、各国グループ会社の参加者も含めた「グローバルタレントマネジメントプログラム」として2022年9月から13カ月間のプログラムを実施しています。
アドバンテストの課題とその対策を考え経営陣に提案するというグループワークを進める中で、参加者は経営陣や自部門以外のメンバーとより連携が強まり、アドバンテストのありたい姿の1つである「学習する組織」(Learning Organization)としても成長しました。

従業員に求める能力の見える化とサポート体制

長期的に企業価値を向上するためには、従業員一人ひとりが自分の役割を明確に把握し、個人の能力を高める必要があります。また、その個々の力を合わせてグループの力としてグローバル・ビジネスの舞台で十分に発揮されることが求められます。そのため、アドバンテストが従業員に求める基礎力、応用力、マネジメント能力、シニアマネジメント能力を 「Advantest Development Framework」として定め、グローバルで全従業員に向けて2022年1月に公開しました。それと同時に全従業員が自律的にスキルを高め、キャリアアップできるよう2つのeラーニングのプラットフォームを導入しました。これらは現地の慣習やルールに適応するべきところもあるため、各国の人事がそれぞれ運用を決める体制となっています。
アドバンテストでは自己研鑚に励み、高度な専門知識や幅広い教養を身につけようとする従業員を積極的に支援しています。

Advantest Development Framework

従業員を称える制度の導入

2019年の変革時に導入された企業文化の更なる醸成のため、アドバンテストのコア・バリューである「INTEGRITY」を職場で体現した行動に対し「The INTEGRITY Award」としてグループ全体から模範となった従業員を表彰する制度を導入しました。
2022年度はAdvantest Taiwan Co., Ltd.で「Newcomer Camp」を企画運営してきた従業員等が受賞しました。同社では近年、採用数の増加により多様なバックグラウンドを持つ新入社員が増加しました。これに伴い、彼らをどのようにアドバンテストの文化に取り込み、定着させるかが課題となっていました。そこでさまざまなアクティビティを通じて新入社員が入社したことを歓迎し、彼らが必要な情報やリソースを確実に入手できるような研修プログラムを企画することで優秀な人材を惹きつけることに成功しました。

教育研修体系と実施状況

アドバンテストでは、あらゆる階層で誰でも参加できる教育研修プログラムを用意しており、基本的な知識から最新の技術動向までを幅広く学ぶことができます。また、この教育研修プログラムが環境変化に適応したものとなるよう、また優秀な人財育成となり業界最先端の人財を惹きつけるよう、従業員教育を専門に扱う(株)アドバンテストアカデミーと協力し、さらなる改善を続けています。

グローバルで大きく変化するビジネス環境に適応するために、中長期経営方針に沿って人財教育を強化しています。また内容の充実化を図るため、1on1などの対話力強化研修の拡充など、新規プログラムの企画、実施に取り組んでいます。また、研修内容に応じて、内部・外部の講師を使い分けるなど、各分野の専門家による効果的なプログラムを用意しています。

グループ各社においても、日々の業務を通じた育成に加え、個人の能力や専門性を高めるための教育を各国・地域のニーズに沿って幅広く展開しています。
例えば、Advantest Europe GmbHでは、アプリケーションエンジニアをはじめ、営業など他部門の従業員も含めて参加者100名以上でテストソリューション等を学ぶイベント「AEG Application Days」を開催。イベントを通して、アプリケーションに関連する情報を共有しアイデアを交換、また新しい市場動向やソリューションについても学ぶことで、従業員自身の成長や日常の業務の改善にも役立っています。アドバンテスト全体の底上げとなるよう、このような取り組みをグループ会社間で情報共有し発展導入できるような仕組みづくりを目指しています。

国内研修

2022年度は、引き続きコロナの感染の状況に応じて対面型の研修とオンライン研修を臨機応変に実施しました。コロナ禍でも変わらぬ学習の機会を提供し体系的に技術スキル・知識が学べるよう、多くの研修においてオンライン会議システムを使用し、出社せずとも研修を受けられる環境を用意しました。オンラインでもグループワークを増やすことで、従業員の学習へのモチベーションを維持すると共に、部署をまたいだ受講者同士の相互啓発の推進や勤務地を問わないつながりを拡げることができました。

語学教育については、従業員への講座紹介と事前勉強会を開催するなど社内マーケティングにも力を入れ、広く受講者を募りました。コロナ禍により家で過ごす時間が長くなったことと、すき間時間でも学習を続けられるマイクロラーニングを導入し、学習時間を確保しやすい環境となったことから、昨年度より約5%多い961名が参加し語学力アップに取り組みました。

リーダー育成の一環としては、新任管理職が教養を養い、自ら「考える力」を身につけることを目的にリベラルアーツ研修を実施しています。パンデミック後の新しい時代を迎えるにあたり、宗教や哲学などの幅広い観点からリーダーに求められる姿など大局観を養います。全3回の研修を通じて、グループメンバー同士で課題意識を深め、意見交換をしながら、成果発表に向かって交流の活性化も進みました。

アドバンテストのコア・バリューの1つである「Inclusion and Diversity」の実践として、主に育児休暇から復帰し時短勤務しているワーキングマザーを応援するためにキャリア教育を主とした外部セミナーに2021年度から参加できるようにしました。アドバンテストは技術系の会社ということもあり、女性の人数が男性と比較すると多くありません。社外の同じ境遇のワーキングマザーと話しあいながら、育児と仕事の両立つまり自らのキャリアを考えるプログラムで、共に働く上司や同僚と上手にコミュニケーションする方法についても学べる内容となっています。

研修時間について

アドバンテスト単体の研修として、2022年度は、のべ5,229名の従業員が何らかの研修を受講し、総研修時間は42,007時間、従業員一人あたりの平均研修時間は約8時間でした。なお、日本を含むグローバルで実施したe-Learningは、のべ59,031人が受講し、総研修時間51,351時間、従業員一人あたりの平均研修時間は約1時間でした。合計して従業員一人あたりの平均研修時間は約9時間でした。

* 集計範囲:アドバンテスト単体
研修カテゴリー 対象 受講者数 研修時間
ビジネス研修(人財マネジメント等) 管理職・一般従業員 831名 6,384H
テクニカル研修(技術) 管理職・一般従業員 501名 1,192H
e-learning(人財マネジメント等) 管理職・一般従業員 2,770名 1,137H
新人研修(階層別) 一般従業員 47名 17,603H
語学/TOEIC(グローバル) 管理職・一般従業員 961名 14,262H
外部セミナー(ビジネススキル等) 管理職・一般従業員 119名 1,430H
合計   5,229名 42,007H

エンジニアの育成(日本)

アドバンテストでは、当社製品が世の中の先端技術を支え続けることを目的に、特にエンジニアの教育に力を入れています。
基礎知識から最新の技術動向について幅広く学ぶことができる、独自のプログラムを用意しており、グループの従業員であれば、誰でも参加することができます。

2022年度も、各種の技術セミナーやテクニカル研修を行い、501名のエンジニアが受講しました。
プログラムのなかには、ベテランのエンジニアが社内講師として登場する講座もあります。例えば、設計品質をテーマとした講座では、設計業務を担当する社員が自身の経験を基に、品質維持と向上に欠かせない基礎技術について講義します。社外から講師を招く講座は、エンジニアやマネジメント層からのテーマの要望を元に実施し、変化の激しいビジネス環境にも順応できるよう支援しています。

これらのプログラムや開発・設計現場でのOJTを通して、技術的な知識だけでなく、アドバンテストのDNAも受け継がれていきます。

ソフトウェア関係

「ソフトウェアエンジニアリングフォーラム」を30年に渡り年間6回開催しています。海外を含む社内外の講師から、アジャイル、CI(Continuous Integration)、GPUなど最新の技術情報はもちろん、セキュリティ関連や世の中の時事情報まで幅広く学べる場になっています。また2019年10月から気づきを継続的に共有しあえる場として「Advantest Engineering Friday」が始まりました。ここでは複数の分科会がうまれ、金曜日の午後に定期的に集まり、組織とは異なるコミュニティとして互いに研鑽しあう場となっています。2022年度は、IT、業務、生産部門など広く社内からの発表があり、「ソフトウェアエンジニアリングフォーラム」が社内で持っている知識、情報、取り組みを「知りたい、広めたい」のブリッジ役となり、社内技術交流の場として活動してきました。

その他高度技術講座

外部講師を招いて従業員の関心が高いテーマや最新動向を学ぶ講座、また技術ノウハウを伝承するための講座を実施しています。
2022年度は共催として東京大学d.Lab(Systems Design Lab)によるD2T特別講演会や、パートナー企業との「EMCテクニカルセミナ」を開催しました。業務に関係するしないにかかわらず幅広いテーマの講演会を設け、エンジニアとしての幅を広げる機会を提供し、モチベーションを高める工夫をしました。
今後は、多様な研修や講演会等を開催することで受講者を増やすことはもとより、受講者が学びたいときに学習できる環境(オンデマンド教育)を構築し、従業員自らの自主的な学習意欲をサポートしていきます。

新入社員の教育・研修(日本)

新入社員は、まず1ヵ月間のビジネス基礎研修で社会人としての基本を身につけ、会社を知ることから始めます。その後、技術系、事務系に分かれて職種別研修を受けます。
技術系社員は、最初に設計の基礎を学び、その後、製品の使用方法や品質保証、知的財産など技術系社員に必須の基本知識を習得する「技術基礎研修」、開発の基本業務を体験する「ハードウェア研修」、「ソフトウェア研修」、「デバイステスト研修」を通じ、アドバンテストのエンジニアとして必要な技術を習得します。事務系社員は、事務系のスキルを磨く「事務系基礎研修」を受講すると同時にグループ全体の事業内容や、部門間の業務のかかわりを学びます。

若手従業員の基礎能力育成のため、毎年新入社員の特性および会社の方針を反映した研修となるよう見直しを行っています。2022年度の新入社員はコロナ禍でも新しい生活様式の中での入社ということで、同期同士でよりコミュ ニケーションを図れるよう対面でのチームビルディング研修を入社してすぐに実施しました。
配属前に「才能診断」をOJTリーダーと共に受検し、そのデータを相互の理解のための参考情報として活用しています。
このように、新入社員はさまざまな研修を経験することで配属後の自分の役割を強く認識し、関係部門と協力して業務を進めていくようになります。新人研修の期間は、当社の従業員になるための大切な形成期間といえます。

新入社員研修の構成