社会の「安全・安心・心地よい」を目指して
2023年の世界経済は、欧州、米国、アジア各国の主要先進国において、金融引き締めとエネルギー価格上昇により景気後退懸念が高まっており、加えて、昨年に引き続き、新型コロナウイルス、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響による成長の減速が足かせとなって新興途上国・地域での低迷や金融リスクも高まっています。従って、主要国を中心とした国レベルでのインフレ抑制、マクロ経済と金融の安定化政策を実施し、2024年以降も強固で持続可能な経済基盤確立のための改革が不可欠となっています。また、気候変動や地球環境問題に対応した脱炭素化や大気汚染物質の削減、生物多様性の保全、少子高齢化問題に対応した労働市場の流動化など人類が直面する課題が年を追うごとに深刻さを増しています。当社は、このような経済・社会環境を踏まえ、一企業として公正で節度ある企業活動を通じて、コア事業の半導体試験装置ビジネスにおいて、顧客ニーズを的確に捉えソリューションを提供することで顧客満足度の最大化に努めるとともに、長期的かつ持続的な視点から「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(コーポレートガバナンス)」を重視したサステナブル経営を推進し企業価値向上に努めています。
ここで、2021年度に始めた第2期中期経営計画 (MTP2) において、我々が取り組んできたESG活動を振り返ります。E(環境)分野では、GHG排出量削減、再生エネルギー導入、生産プロセス見直しによる工期短縮、グリーン製品の開発/販売強化、資源循環や生物多様性への対応などを重点テーマとし、ゴールを設定するとともにKPIによる評価と改善を行ってまいりました。S(社会)分野では、サプライチェーンにおける人権や安全衛生、紛争鉱物の不使用および公正な取引慣行と調達方針遵守などの企業が果たすべき社会的責任としてサプライチェーン全体で透明性や信頼性を高める活動の強化を図りました。また、グローバル人事施策として、ダイバーシティの推進、人権方針の浸透と教育の強化、従業員エンゲージメントの強化、顧客に対しては顧客満足度の向上に努めてまいりました。G(コーポレートガバナンス)分野の取り組みとして、当社の取締役は、執行部門からの事業戦略に関する説明をベースに、取締役会の実効性をどのように高めていくかについて頻繁に議論を重ね、経営陣のサクセッションプランを本格導入しました。また、全世界従業員へのThe Advantest Wayのさらなる浸透についても討議を重ね、コンプライアンスやリスクマネジメント体制についても強化を図ってまいりました。
一方、テクノロジーの急速な変化に代表されるコミュニケーション・ネットワークやデータセンターなどのデジタルインフラ領域におけるイノベーションとあらゆる電子機器に使用される半導体の高度化がその中核となって社会のデジタル・トランスフォーメーションを加速させています。当社は、半導体テストを通じて、世界の中の「安全・安心・心地よい」をお届けする会社です。半導体は、工業品から日用品に至るさまざまな製品や社会インフラに組み入れられ、人々の生活の豊かさの増大、社会の利便性向上、社会課題の解決に貢献しています。あらゆる領域に採用されている半導体は、さらなる性能の向上に向け、日進月歩の技術進化が進んでいます。半導体の用途と使用量が拡大する中、その不良がさまざまな製品に混入することは、消費者や社会インフラが不都合を被るだけにとどまらず、自動車や医療機器、データサーバーなどに使われる半導体の場合は、より重大な社会的損失を招きかねません。そのため、半導体が設計どおりに動作するかを試験する検査工程や量産時の最終製品検査工程において、半導体の品質を入念に確認することは、半導体メーカーにとって不可欠であり、当社の製品やサービスが「安全・安心・心地よい」暮らしの一端を担っていると考える所以です。
今後のESG経営における「環境」面においては、さらなる気候変動課題への対応強化として、RE100への取り組みのロードマップを作成し、自社のCO2排出量を2030年度までに2018年度比で60%削減させることを目指します。そして、顧客や取引先などのステークホルダーの皆さまとともに脱炭素社会の実現に向け努力していく所存です。また、「社会」面においては、まず当社の人的資本政策として、人種やジェンダーのみならず、異なる文化、背景を持つ人財を含めたさまざまな視点での多様化を推進するとともに、人財教育、能力開発、人財登用、報酬制度などさまざまな人事制度の改革を進めており、その改革精神は、当社のコア・バリューであり世界中の従業員の行動の基準として示される「INTEGRITY」が基礎となっております。また私たちを取り巻くさまざまなステークホルダーのすべてにおいて「人権」保護を意識した行動を心掛け、私たちの企業活動が「人権」に及ぼす影響のリスク排除に努め、コンプライアンスやリスクマネジメントの強化を図ってまいります。「コーポレートガバナンス」面では、グローバル経営の強化策として2021年に導入したCxO体制をさらに強化すべく2023年1月より代表取締役3名体制としています。サクセッションの一端であるとともに、グローバルな人財登用による人財の多様化を通じ経営体制のさらなる強化に向け取り組んでいます。
私たちは、「ESGのさらなる推進」を中長期経営方針の重点戦略の一つと定め、企業価値のさらなる向上とサステナブルな社会の構築に貢献してまいります。
今後とも一層のご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。
2023年9月
経営執行役員 CFO & CSO
経営戦略本部長
サステナビリティ経営推進担当
三橋 靖夫