コミュニティ活動の基本的な考え方と体制
アドバンテストグループは、2019年7月に定めた「ESG推進によるサステナビリティ」に掲げる「ステークホルダーを尊重し、社会との調和を図り、SDGsへの貢献も意識し持続可能な社会の実現に取り組みます。」という基本姿勢に基づき、「地球環境保全」「次世代育成」「地域社会活動」の分野を中心にコミュニティ活動を行っています。
コミュニティ活動にあたって、ステークホルダーの皆さまや社会のニーズを追求し、豊かな社会の実現のため、グローバル企業として社会的な責任を果たしていきます。
学術支援、次世代育成支援に対する取り組み
「先端技術を先端で支える」アドバンテストの事業活動は、世界各地ではぐくまれた多数のエンジニアの力と事業を営む地域からの理解に支えられています。これを踏まえ、科学技術を担う人財の幅広い育成に貢献すべく、アドバンテストはおもに研究・開発拠点のある地域において、学術・科学教育の支援を行っています。例えば日本では、東京大学システムデザイン研究センター(d.lab)に設置された「アドバンテストD2T寄附講座」を通じ、日本全国の学生にVLSIの設計からテストまで一貫した研究・教育環境を提供することで、テスト設計の専門家となりえる人財の育成とSoC(システム・オン・チップ)の設計に関する研究を支援しています。そのほか、日本の事業所近隣の小学生を対象とした理科工作教室の開催や、電子工学に興味を持つドイツの女子学生を事業所に招待しての職場体験会(ガールズデー)など、地域に根差した活動を継続して行っています。
人道的支援の取り組み
アドバンテストは、「The Advantest
Way」に基づき、世界各地で多くの社会支援活動や慈善活動を長年実施しています。
ロシアによるウクライナ侵攻の影響が激化した2022年は、困難な状況に陥っている方々への人道支援として、ユニセフをはじめ国内外5団体に総額9,000万円を寄付しました。当社のドイツ現地法人では「ウクライナ・タスクフォース・チーム」を社内に立ち上げ、今回の寄付のほか、欧州現地の諸団体による難民の方々への宿泊施設、衣服、衛生用品の提供などの活動を支援しています。
アドバンテストは大規模災害が発生した際に被災者に対する支援も実施しています。また、アドバンテストでは、障がい者支援、難民支援、生活困窮者支援など、世界の事業所でその地域のニーズに即した慈善活動も継続して行っています。
推進体制
当社では、全社横断の組織「サステナブル経営推進ワーキンググループ(SMWG)」のもとでESG活動を推進しています。
コミュニティ活動については、世界8拠点でSDGs活動を推進するチームメンバーを組成し、サステナビリティ推進室と協働しています。また、年に2回開催されるSMWGのグローバルESGミーティングにおいて、コミュニティ活動に関する議論も日本語と英語で行われています。
従業員の参加を推進する仕組み
アドバンテストグループは、従業員のボランティア活動への参加を積極的に推進しています。
コミュニティ活動の場を提供するボランティア活動については、イントラネット掲示板などを通じ参加者を募集しています。また、社内報や社内SNS(My
LIFE.
ON.)に各地域の活動報告や参加者の声が寄せられるなど、参加の輪が着実に広がっています。
ボランティア活動の参加にあたり、従業員は年次有給休暇が繰り越されず切り捨てとなる日数を積み立て、ボランティア休暇として利用することができます。
My LIFE. ON.の詳細は、「社内SNS「My LIFE. ON.」による、グローバルな啓発活動」(環境教育ページ)を参照ください。
社会貢献活動の事例
アドバンテストグループでは、従業員一人ひとりがよりよい社会づくりに貢献するため、世界各地の拠点でさまざまな社会貢献活動を行っています。2023年度も、自然保護活動、高齢者、障がい者などへの福祉支援、災害支援、次世代教育支援など、世界各地で合計90件以上の社会貢献活動を実施しました。
詳しくは「環境貢献への取り組み」「生物多様性への取り組み」もご参照ください。
自然保護
フィリピン:植樹ボランティア
バギオ市環境公園管理部と協力し、フィリピンで有数の規模を誇るバギオ植物園で植樹を行いました。同植物園は、街のオアシスとして市の緑化政策の重要な役割を果たしています。当日はフィリピンの従業員8名が参加し、コーヒーの木を16本植えました。従業員たちは植樹をとおし仲間意識を高め、緑豊かな地球の未来に貢献しました。
中国:竹林保全活動
浙江省安吉市の森林保護キャンプ場で、地元の森林レンジャーの指導のもと、従業員が竹の伐採や林道の整備などの竹林保全活動を行いました。竹林は二酸化炭素の吸収力が高く、地球温暖化防止に大きな役割を果たす一方、放置されると劣化し深刻な問題となります。従業員たちは合計16本の竹を伐採し、伐採した竹から花瓶やペン立て、箸などの工芸品を作り竹を有効に再利用しました。
日本:ビオトープで下草刈り
当社が保有するビオトープの林で、従業員が昼休みに下草刈りのボランティア活動を実施しました。下草刈りとは、目的の樹種の成長を促すために周囲の雑草、雑木を除去する作業です。今回は「アズマネザサ」(笹の一種)を刈り取りました。この笹は放っておくとあたり一面に広がってしまい他の植物が育ちにくくなるため除去が必要でした。従業員たちは当社ビオトープ管理士の指導のもと、下草刈り作業をとおして生物多様性の大切さを学びました。
福祉支援
シンガポール:高齢者施設でボランティア
事業所近隣にある2つの高齢者施設で、従業員52名が参加し、ボランティア活動を実施しました。従業員は6つのグループに分かれ、60歳から95歳までの高齢者約90名に、楽しい記憶力クイズや音楽パフォーマンスを提供しながら、共に心温まる時間を過ごしました。高齢者からは「今年一番の日だった」と感謝の声が聞かれました。
マレーシア:調理ボランティアを実施
ペナンのNGO Mutiaraフードバンクと協力し、従業員が調理のボランティア活動を行いました。Mutiara フードバンクは、福祉を必要とする人たちに食品や食事を配布するNGOです。従業員たちは、当社が寄贈した食材や厨房用品使ってトマトライスやレッドソースチキンなどを作り、200箱に詰めました。Mutiara フードバンクが、それらの食事を必要とする家庭に配りました。従業員たちはこの活動をとおし、SDGs目標2「飢餓をゼロに」に貢献することができました。
韓国:視覚障がい者の釣り体験をサポート
視覚障がい者に余暇の機会を提供するため、従業員ボランティア12人が参加し、視覚障がい者たちの釣り体験をサポートしました。障がい者一人につきボランティアが一人ついて、餌を挟んだり、魚が釣れると釣り針を抜くのを手伝ったりしながら、目が見えなくても楽しく釣りができるように手助けしました。またこの活動にかかった費用6,000,000ウォンは当社が負担しました。
アメリカ:プレイハウス作りで子供たちを支援
住宅建設を支援する国際NGO Habitat for Humanity East Bay/Silicon Valleyと協力し、プレイハウス作りイベントを実施しました。従業員とその子供たちが参加し、木材を切って屋根板を取り付け、木工細工や塗装などを施して2件のプレイハウスを作り、必要としている家族に贈りました。受け取った家族からは「子供がとても気に入って毎日遊んでいます」との感謝のメッセージが届きました。
災害支援
イタリア:洪水被害者を支援
2023年5月にイタリア北部エミリア・ロマーニャ州で発生した豪雨による洪水被災者を支援するため、救済団体Specchio d'Italiaに5,000ユーロを寄付しました。寄付金は、緊急支援物資、避難所支援、コミュニティ再建などの人道支援に役立てられました。寄付先からは当社イタリア事業所へお礼状が届きました。
中国:地震被害者に寝袋を寄付
2023年12月19日、中国甘粛省で発生した大地震に対し、政府機関と被災地からの緊急支援要請を受け、寝袋260個を無償提供しました。当社の迅速な発送で寝袋は同月25日に現地へ到着し、仮設避難所などで被災者に役立てられました。
次世代教育
日本:半導体人財の育成
2010年代初頭、日本の半導体業界は、長らく続いた業界の業績低迷によって“斜陽産業”とも呼ばれる状況でした。学生の電子工学部への進学や、半導体関連企業への就職が敬遠される現実を前に、当社は、半導体産業が継続して発展できるような基盤づくりと半導体人材の育成をしていかなければ自社の持続的な成長も難しくなるとの危機感から、2012年にパワーデバイス*の需要拡大を見込んで設立されたパワーデバイス・イネーブリング協会(PDEA)を構想段階から支援し、以後10年以上にわたって自動車メーカー、電子機器メーカー、半導体メーカーおよび公的機関などと共に活動を続けています。
2014年にPDEAが「半導体技術者検定」を開始した際には、この検定受検者をサポートすべく、半導体の基礎から開発、製造、テスト、品質保証までを網羅的に学習できる教本、「はかる×わかる半導体」(3部シリーズ)を制作しました。この教材は、おもに半導体の設計・製造・テスト、品質保証、回路設計に携わるエンジニア向けを想定していましたが、近年では、半導体業界を取り巻く環境の変化により、20代~30代の学習者の需要も高まっており、熊本県内の工業高校や高等専門学校の特別カリキュラムや、大手デバイスメーカーの新人教育などでも活用いただいています。さらに、SEMI Japan、公益財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)、大分LSIクラスター形成推進会議といった外部団体とも連携し、「はかる×わかる半導体」を使用した共催セミナーを開催するなど、この教材には一層多くの期待が寄せられるようになっています。
当社ではこれからも、半導体産業の継続的な発展と基盤づくりを目指して、未来の人材育成にも力を注いでまいります。
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*パワーデバイス:パワー半導体とも呼ばれ、インバータ・コンバーターなどの電力変換器に用いられています。省エネ、低消費電力といった環境技術への関心が高まる昨今、ますます注目を集めている半導体です。
日本:知財創造教育を実施
日本政府は、児童・生徒に「新しい創造をすること」「創造されたものを尊重すること」を楽しみながら理解させ育むことにより、社会を豊かにしていこうとする知財創造教育*を提案しています。発達段階にあわせた知財創造教育を推進するために、学校と社会が連携して教材をつくることが求められています。
アドバンテストは、小学生を対象に、発明の考え方や日本の大発明に関する授業を2021年度より実施しています。子どもたちは人の暮らしが発明によって豊かになっていることを知り、学校からも好評を得ました。もっと多くの子供たちに知財創造教育が実施できるよう、活動を継続していきます。
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*知財創造教育の詳細は内閣府の知財創造教育の資料を参照ください。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tizaikyouiku/pdf/s-1.pdf
日本:小学校でプログラミング教室を開催
事業所近隣の小学校2校で、6年生を対象に、初のプログラミング教室を開催しました。当日は、当社の教育担当者が開発したマウス型ロボットを使い、センサーによってロボットが壁の手前で止まるプログラムを完成させました。当社従業員が子供たちをサポートしながら楽しく次世代教育に貢献しました。
台湾:へき地の小学校で教育支援
新竹市の全校児童30人の小学校で、英語と理科の教育支援を実施しました。英語の授業では、食べ物を注文するときの会話を教え、昼食時には授業で使用したメニューと同じ料理を提供し子供たちに喜ばれました。理科の授業では、楽しみながら”非ニュートン流体”を理解する授業を行いました。この教育支援活動に対し小学校から当社に感謝状が贈られました。
日本:インタラクティブ地球儀の活用
アドバンテスト群馬R&Dセンタでは、未来を担う子供たちや、従業員、ステークホルダーなどへの環境教育に活用するため、地球のデータをリアルタイムに映すインタラクティブ地球儀を設置しています。この地球儀は、地球の過去/現在/未来の変化や大気温変化など様々なデータを、球体上に映像で映し出すものです。2022年度は、半導体製造装置・材料の国際展示会SEMICON JAPANの当社ブースESGコーナーにおいてもこの地球儀を設置しました。来場者にも好評で、気候変動などの社会課題を考えるきっかけを提供できました。同様に、2022年度に続き2023年度の新入社員研修での環境学習にも使用するなど、今後もこのツールを、幅広いステークホルダーの環境学習に有効に活用していきます。
日本:EduTown SDGsアライアンスへの参画
アドバンテストは、小学生向けに実施している理科教室に加えて、小中学生がSDGsを学ぶプロジェクト「EduTown SDGsアライアンス」(制作:日経BP社、TREE/運営:東京書籍)に2021年度から参加しています。「EduTown SDGsアライアンス」は、「持続可能な社会の創り手の育成」に協力するためのプロジェクトで、教育用ウェブサイト「EduTown SDGs」の制作・運営や副教材(冊子)の無料配布を行っています。
中国:半導体テスト人財の育成
「社会貢献」のテーマのもと、Advantest (China) Co., Ltd. は2018年から「University Education Plan」という大学向けのプログラムを提供しています。このプログラムは、IC産業(特にICテスト分野)の人材育成について、大学や研究機関との連携を強化することを目的としています。数年にわたり順調にプログラムの実施を重ね、何千人もの大学生にICテストの知識を提供してきました。
パンデミックの後の2023年は、このプログラムが大きな飛躍を遂げた年となりました。大学の教員をオフィスに招待し、CloudTesting™ Service(CTS)のプラットフォームを使ったトレーニングがいかに大学教育に適しているか伝えることにしたのです。26の大学から30人以上の教員や教授を招いてセミナーを開催し、産学連携に関する考えや計画を共有しました。また、10以上の大学に出向き、900人以上の学生にICテストの知識を提供しました。
私たちは、業界のリーディングカンパニーとして社会的責任を果たすことに尽力しており、これらの取り組みはより持続可能な社会の実現に貢献すると考えています。今後も、より多くの大学との連携できるよう、より多くのCTSシステムを導入し、効率のよい実務モデルを確立していく予定です。
グローバル:産学連携で半導体人財を育成
当社では2007年より、東京大学大規模集積システム設計教育研究センター(VDEC)において、アドバンテストD2T寄附研究部門を設立、その後VDECが2019年に東京大学大学院工学系研究科附属システムデザイン研究センター(d.lab)として生まれかわったのを機に、アドバンテストD2T寄附講座を開設し、「設計」と「テスト」の橋渡しを目的とした研究・教育活動を行っています。
また、2023年6月には、米国アリゾナ州に拠点を持つ世界的な半導体メーカーNXP Semiconductors社と共同で、アリゾナ州立大学にテスト・エンジニアリング・コースを開設しました。アリゾナ州には半導体産業が集積しており、多くの半導体メーカーが生産拠点を設けています。今後テスト・エンジニアの需要増が見込まれる中、地域に根差した半導体テスト人材の育成を目指していきます。
その他の支援
ドイツ:ウクライナに医薬品を寄付
ウクライナ難民支援活動の一環として、子供たちや家族を支援しているDuisburgのNGO Kindernothilfe e.V.に5,000ユーロを寄付しました。この寄付の目的は、ウクライナの避難所で暮らす難民の子どもたちに1年分の薬を提供することです。実際に当社の従業員がDuisburgのKindernothilfe e.V.事務所を訪れて、寄付金を手渡しました。
ドイツ:中古IT機器の払い下げ抽選会の収益を寄付
中古IT機器 (ノートパソコン、スマートフォン等)を従業員に払い下げる恒例の抽選会を開催し、集まった総額9,900ユーロを8つの慈善団体 (未熟児支援団体、障がい者支援団体、子供支援団体など)に分けて寄付しました。