コーポレートガバナンスの基本的な考え方
当社グループは、「先端技術を先端で支える」を経営理念とし、世界中のお客さまにご満足いただける製品・サービスを提供するために、たえず自己研鑚に励み、最先端の技術開発を通して社会の発展に貢献することを使命としています。
この経営理念に従い、当社グループは、すべてのステークホルダーに対して、常に心を開き、正直であり、お互いを尊敬することで、当社グループの持続的な発展と中長期的な企業価値の向上を目指します。また、あらゆる事象に対し、表層に現われている現象の「根源にあるものは何か」、そこに「内包される本質は何か」を厳しく追求し、正しいソリューション(解決)を見出すように努めます。これらを体現していくため、公平、効率的、かつ透明性の高いガバナンス体制を構築することをコーポレートガバナンスに関する基本的な考え方としています。
コーポレートガバナンス体制
技術の進歩や地政学リスクの影響等によりめまぐるしく変化する経営環境の中、企業の価値と競争力を継続的に向上させていくためには、経営判断や経営戦略も、そのスピードにあわせて実行していかなければなりません。また、法令を遵守した、健全で透明性の高い事業活動の遂行も重要です。それらの課題を解決するためには、経営における機能によって権限と責任の範囲を明確にし、その責務を担う人材を配置することが重要となります。
当社は、2015年6月以降、監査等委員会設置会社を採用しています。監査等委員である取締役が取締役会において議決権を行使するなど監査等委員会設置会社の諸制度のもとで、取締役会の監督機能とコーポレートガバナンス体制をいっそう強化し、さらなる企業価値の向上を図っています。また、急激に変化する経営環境に即応する体制を確立し、コーポレートガバナンスを強化するため、2003年より執行役員制度を導入しています。
ガバナンス体制一覧(2024年6月28日時点) | |
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形態 | 監査等委員会設置会社 |
取締役の人数 | 9名 |
うち、社外取締役の人数 | 5名(55.5%) |
うち、外国籍取締役の人数 | 2名(22.2%) |
うち、女性取締役の人数 | 2名(22.2%) |
監査等委員でない取締役の任期 | 1年 |
監査等委員である取締役の任期 | 2年 |
監査等委員である取締役の人数 | 3名 |
うち、社外取締役の人数 | 2名 |
監査等委員会委員長 | 社外 |
指名報酬委員会設置 | 有 |
指名報酬委員 |
3名(取締役) (うち2名は社外取締役) |
指名報酬委員長 | 社外 |
業績連動報酬制度 | 有 |
執行役員制度 | 有 |
執行役員 | 26名 |
うち外国籍の執行役員 | 14名 |
コーポレートガバナンス報告書については下記をご参照ください。
取締役会
取締役会は、経営の意思決定機関として、グループ全体の経営方針、経営戦略等の重要事項について決定するとともに、業務執行機関の業務執行を監視、監督します。当社は、取締役の過半数を社外取締役とすることで、取締役会の監視、監督機能を強化しています。
定例の取締役会は月1回開催し、1回につき3~5時間程度かけて重要事項について議論しています。また、取締役会の中で議論しきれない中長期的な課題については、オフサイトミーティングを開催し、その中で取締役会メンバーが議論しています。2023年度において取締役会は13回、オフサイトミーティングを1回開催し、全取締役がすべての回に出席しています。取締役会およびオフサイトミーティングでは、様々な議題に対して幅広い知識と経験を有する取締役がそれぞれの視点から意見を表明し、活発な議論が交わされています。
2023年度における取締役会およびオフサイトミーティングでの主な討議・報告事項は、以下のとおりです。
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2024年度から次期中期経営計画をスタートさせるにあたり、目まぐるしく変化しつつも成長が期待できる半導体市場において当社グループのより一層の飛躍を実現するため、2024年4月1日付でグループ経営執行の最高責任者(Group CEO)をダグラスラフィーバ氏とし、GroupCOOおよび当社の社長を津久井幸一氏に変更することを決議しました。
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第2期中期経営計画(MTP2)の最終年度である当年度の取り組みの進捗、および中期経営計画期間全体における経営指標と戦略施策の達成度を総括し、取締役会に報告しました。
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中長期経営方針「グランドデザイン」の改定および第3期中期経営計画(MTP3)の策定に向けて討議を重ねました。中でも中核テーマとなる、中長期的に当社がありたい姿について取締役会で議論を深めました。
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当社株式の投資単位当たりの金額を引き下げることにより、より投資しやすい環境を整え、投資家層の拡大を図ることを目的に、2023年9月30日を基準日として、当社普通株式1株を、1株につき4株の割合をもって分割することを決議しました。
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成長投資として過去実施したM&Aのレビューを報告し、今後のM&Aへの教訓等について議論しました。
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IR報告を行い、投資家とのコミュニケーション状況や株主の保有状況について取締役会に報告しました。
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ESG行動計画2021-2023の進捗について取締役会に報告するとともに、次期サステナビリティ行動計画や各種法令対応について議論しました。
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売上や利益、キャッシュ・フロー等の現況について毎月取締役会で報告を行いました。棚卸資産残高の増加を受け、全体のオペレーションにおける課題について議論しました。
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コンプライアンス報告を年4回、内部監査報告を年2回行い、ヘルプラインからの通報を含むコンプライアンスに係るインシデントや内部監査体制と内部監査指摘事項について取締役会に報告しました。
2023年度の取締役会および重要な委員会の出席状況は以下のとおりです。
2024年6月28日現在の取締役会は、業務執行取締役(社内取締役)2名、非業務執行取締役(社内取締役)2名、非業務執行取締役(社外取締役)5名、計9名(いずれも監査等委員である取締役を含む)、うち2名は外国籍(米国籍)、2名は女性の取締役で構成されています。取締役の多様化にともない意思の疎通が取れないことがないよう、取締役会には同時通訳を配し日本語、英語双方で自由に発言ができるよう配慮しており、資料および議事録についても英訳を準備しています。
取締役会の実効性評価
取締役会はその役割と責務の実効性を評価するため、毎年、取締役全員にアンケートを行い取締役会の構成、運営、議論の状況等について意見の収集と分析を行っています。
2023年度の対応
2022年度の取締役会の実効性評価では、各取締役が異なる視点から議論を交わせていることを確認した他、外部環境の変化に対する感度のさらなる向上および取締役会で報告される資料の論点の明確化が重要であるという結果となりました。これらの評価結果に対し、2023年度は以下の対応を実施しました。
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オフサイトミーティングでは、当社を取り巻く外部環境の変化や地政学リスクを議題に取り上げました。
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取締役会では、説明者にエグゼクティブサマリーを使用して簡潔に説明するよう求め、議論に多くの時間を割けるように取り組んでいます。
2023年度の取締役会の実効性評価結果
当社は2023年6月の株主総会で取締役会の構成を見直し、社外取締役が取締役の過半数を占めることになりました。女性取締役も2名となり、外国人取締役も引き続き2名在籍することからも、人数や社外取締役の比率については適切であることが確認できました。また、当社は2024年4月1日付でGroup CEOを吉田 芳明氏からダグラス ラフィーバ氏に変更しました。数年かけて指名報酬委員会主体で交代を検討し、定期的に取締役会にその進捗を報告してきました。取締役会では、取締役メンバーからフィードバックを受けていたこともあり、後継者計画については十分な議論ができていたと評価されました。
一方、より実効性の高い取締役会にするための改善事項として、以下の点があげられました。
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外部環境の変化に対し、より迅速に対応策の検討が行われることが好ましい。
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取締役会のタイムマネジメントが課題である。事前に課題を整理し、論点を絞り込んだ上で、取締役会で議論することが好ましい。早い段階で社外取締役の意見を取り入れられるような仕組みを検討することも考えられる。
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新たに就任した社外取締役2名に対し、当社グループの経営方針、事業内容等に関する説明会および当社事業所の見学会といったオンボーディングの支援が行われたが、さらなる改善の余地がある。
スキル・マトリックス
当社は、取締役や経営執行役員の人選にあたっては、当社の経営理念、経営戦略・事業戦略とともに、企業経営を巡り注目される諸問題およびステークホルダーとのコミュニケーションを考慮する必要があると認識しています。当社の事業は、社会の発展を支える半導体の製造に不可欠であり、また、社会・産業の設備・システムの安定稼働を支える重要な機能を担っており、周辺領域を含め大きな成長機会があります。このような当社の事業を中長期的に成長させ、企業価値の向上を実現する上で重要度が高い領域として9つの経営活動領域を特定しています("企業経営・経営戦略(Management & Corporate Strategy)" "半導体関連産業(Semiconductor)" "テクノロジー(Technology)" "営業・マーケティング(Sales & Marketing)" "財務・会計(Finance & Accounting)""法務・コンプライアンス(Legal & Compliance)" "人財マネジメント(Human Capital Management)" "グローバルビジネス(Global Business)" "デジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation)")。取締役会および指名報酬委員会において、この9つの領域において業務執行または監督の責務を果たすために必要な「知見・経験」を議論し、経営執行役員や取締役に求められるスキルセットを設定しております。
各取締役のスキルは次頁のとおりとなります。なお、当社が求めるスキルは環境変化に応じて常時更新してまいります。
スキルの詳細
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大規模または複雑な事業やオペレーションを行う企業の責任者
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当該分野の専門サービス会社等の幹部
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サプライチェーンマネジメント
各取締役および経営執行役員のスキルは以下のとおりです。
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※表をスクロールして全体をご確認いただけます。
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※2024年6月28日付の経営執行役員(取締役兼務者を除く)のスキルは次のとおりとなります。
社外取締役の選任理由
取締役のトレーニング
当社では、「取締役に対するトレーニングの方針」を以下のとおり定めています。
取締役に対するトレーニングの方針 |
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2023年度においては、新たに就任した社外取締役に対して、当社グループの経営方針、事業内容等に関する説明会および当社事業所の見学会を実施しました。また、取締役全員が韓国の生産現場を視察しました。
また、当社では業務執行取締役全員が、ガバナンスにかかる外部研修を受講しています。ガバナンスの重要性を鑑み、当社では、取締役でない執行役員に対しても同研修を展開しています。
監査等委員会
監査等委員会は、監査等委員会で策定した監査方針、監査計画、重点監査項目、職務の分担等に従い、会社の内部監査部門その他の内部統制部門と連携の上、重要な会議(経営会議、Business PlanMeeting、内部統制委員会等)に出席し、取締役、執行役員、従業員等からその職務の執行に関する事項の報告を受け、必要に応じて説明を求め、重要な決裁書類等を閲覧し、本社および主要な事業所において業務および財産の状況を調査します。また、子会社については、子会社の取締役との面談、監査役等との意見交換会を実施することで意思疎通および情報の交換を図り、必要に応じて子会社から事業の報告を受けるほか、主な連結子会社の往査(対面およびWeb会議でのインタビュー)を実施し、その業務および財産の状況を監査します。これらの調査および監査活動の結果、フィードバックが必要であると認識した内容については、取締役や各部門の責任者に意見を伝えています。
監査等委員会は、監査等委員である社内取締役1名、監査等委員である社外取締役2名の計3名(うち常勤である監査等委員1名)*で構成されており、委員長は社外取締役が務めています。なお、監査等委員である取締役は、監査等委員以外の取締役と区別して株主総会で選任されます。監査等委員会、監査室その他の内部統制部門、会計監査人、当社グループ各社の監査役等は定期的な協議および必要に応じて随時打合せを行うことにより相互の連携を図っています。
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※人数は2024年6月28日現在
会計監査人
会計監査人は、連結計算書類および計算書類等の会計監査を行い、監査報告書を作成します。当社はEY新日本有限責任監査法人と監査契約を結び、所定の監査を受けています。当社が東証2部に上場した1983年度より、EY新日本有限責任監査法人(当時、監査法人第一監査事務所)が継続して当社の上場監査を実施しています。2023年度において当社の会計監査業務を執行した公認会計士は、松本 暁之氏、太田 稔氏および中田 裕之氏です。業務執行社員のローテーションは適切に実施されており、業務執行社員については、連続して7会計期間を超えて会計監査業務に関与しておらず、筆頭業務執行社員については連続して5会計期間を超えて会計監査業務に関与していません。業務執行社員については、7会計期間の関与の後、再度同じ会計監査業務に関与する場合には、5会計期間のインターバルを設けることとしています。また、筆頭業務執行社員については5会計期間の関与の後に、再度の関与は行わない運用としています。また、当社の会計監査業務に係る補助者は、公認会計士を主たる構成員とし、システム専門家等の専門的知識を有する者を含んでいます。
内部監査
当社では、本社監査室および海外関係会社の監査チームにより構成される内部監査チームが、日々の事業活動が国内外の関係する法令および社内規則に則って有効かつ効率的に行われていることを検証するため、業務監査、コンプライアンス監査、内部統制監査を実施し、内部統制システムの有効性を評価するとともに、必要に応じ、現場への改善支援を行っています。内部監査チームは、公認会計士、公認内部監査人、内部監査士等の資格を保有し、監査品質の向上に努めています。
指名報酬委員会
当社は2005年より任意機関として指名報酬委員会を設置しています。指名報酬委員は取締役会の決議により選任された社外取締役2名を含む3名*の取締役で構成されており、委員長は社外取締役が務めています。指名報酬委員会は、取締役会の諮問により、役員の指名および報酬に関する事項を議論し、取締役会に答申しています。2023年度は14回開催し、出席率は100%です。
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※人数は2024年6月28日現在
なお、指名報酬委員会での主な審議事項は以下のとおりです。
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最高経営責任者等の後継者の計画について
取締役会は、Group CEOに求める要件や後継者計画についての報告を適宜指名報酬委員会から受け、主体的に議論を行っています。その結果、当社では2024年4月1日付で、Group CEOを吉田 芳明氏からダグラス ラフィーバ氏に変更しました。その検討プロセスは以下のとおりです。
当社は、吉田 芳明氏がCEOに就任(2017年1月)して4年が経過する2020年頃から、本格的に後継者計画の検討を開始しました。
指名報酬委員会を中心に、CEOや経営執行役員の評価および事業面・人財面の状況と課題を社外取締役とCEOで共有し、取締役会に報告しました。2022年からは、外部専門家を起用して、これらの課題を客観的視点で再整理し、次期CEOと経営チームの要件を指名報酬委員会と取締役会で討議・再確認しました。候補者については、社内と社外の両方から探し、候補者に対して外部専門家のアセスメントを実施しました。その結果、次世代は、ダグラス ラフィーバ氏と津久井 幸一氏を中心にしたトップマネジメント体制が最も適切であるという結論に至り、2022年秋に指名報酬委員会から取締役会へ報告しました。この構想に基づき、2023年1月からラフィーバ氏と津久井氏の両氏を代表取締役兼執行役員副社長に任命し、この準備期間を経て、両名の適性や組み合わせを再確認することができましたので、次期中期経営計画(MTP3)にあわせて2024年4月 から新体制に移行することに決めました。新体制では、ダグラス ラフィーバ氏が代表取締役兼経営執行役員 Group CEOとして、アドバンテストグ ループ全体の最高経営執行責任者になり、津久井 幸一氏が代表取締役兼経営執行役員社長 Group COOとして日本法人である株式会社アドバンテストの業務執行を担うとともにGroup CEOを補佐し、吉田 芳明氏が取締役会長として取締役会の議長を務めます。今後の後継者計画についても、同様のプロセスで進めていく予定です。 -
取締役および執行役員の候補者ならびに経営体制について
2023年6月以降の取締役・執行役員体制については、候補者を選定し取締役会に提案するとともに、CxO体制の強化を含む経営体制に関する議論を行い、取締役会へ提案しました。
2024年6月以降の取締役・執行役員体制については、取締役会の構成や候補者の選定に関する議論を行うとともに、Group CEOの変更に伴う経営体制などの議論を行い、適宜取締役会に報告しました。 -
取締役、経営執行役員に求める知見・経験(スキルマトリックス)について
スキルマトリックスは、経営環境の分析・予測から始まり、当社の経営戦略・事業戦略、それらを実行する執行体制、経営執行を監督、指導する取締役会体制への流れで執行体制および取締役会体制を検討する際に参照するツールであるとの認識のもと、非業務執行取締役との議論も踏まえ、取締役、執行役員に求める知見・経験の要素を設定しました。 -
役員報酬制度の運用について
あらかじめ設定された各役員の役割および期待する成果に対する実績を評価した上で、2022年度役員賞与個人別評価について議論、決定しました。
2023年度役員固定報酬、業績連動賞与の業績指標、株式報酬について議論し、取締役会に提案しました。
経営体制の変更および新しい中期経営計画等を踏まえ、役員報酬制度の一部見直しについて議論を行い、取締役会に提案しました。
当社は、役員の選任および報酬の決定に関して客観性と透明性を確保するためにその方針と手続きを定め、ウェブサイトにて公開しています。
経営会議
当社は、業務執行機関が迅速かつ効率的な業務執行ができるように必要な権限委譲を行っており、経営会議を重要な業務執行の決定機関としています。執行役員の中からグループ経営を牽引するにふさわしい役員を経営執行役員とし、経営会議のメンバーとしています。経営会議のメンバーは過半数が外国籍である経営執行役員で構成されており、ダグラス ラフィーバ氏が議長を務めています。また、経営会議は月2回程度の開催頻度で、主にWeb会議形式で開催しています。
CxO体制
当社では、グローバル本社機能における各ファンクションの責任者として、CxO体制を導入しています。2024年7月現在、9つのCxOファンクションを5名でカバーし、Group CEO、Group COOが分担して各CxOを管掌しています。その機能をグローバルの観点で担うにふさわしい人財をCxOとし、当社グループ一体で経営できる体制を構築しています。