マテリアリティとサステナビリティ行動計画

マテリアリティ(重要課題)の特定

当社グループは、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)の発行したサステナビリティ開示基準を参考に、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与え、投資家の判断に影響を与える合理的な可能性があるサステナビリティ関連リスクおよび機会の識別を行いました。当社グループは、マテリアリティ評価を実施する上で、気候変動に係る検討において一部シナリオ分析を行っております。

マテリアリティ評価を実施するにあたり、当社グループのバリューチェーンを整理したうえで、SASB(サステナビリティ会計基準審議会)スタンダードや欧州連合(EU)の企業サステナビリティ報告指令(CSRD)に定められる「欧州サステナビリティ報告基準」(ESRS)、当社グループと同じ産業において事業を営む企業による開示情報等を参照し、当社グループにとって重要である可能性のあるサステナビリティ関連リスクおよび機会を識別しました。識別したサステナビリティ関連リスクおよび機会を基に、社外ステークホルダーとのコミュニケーションや関連するCxOおよび部署との協議を通じて各リスクおよび機会の重要性を判定しました。サステナビリティ関連リスクおよび機会の重要性は、発生可能性および発生した場合の財務的影響を踏まえ評価しております。マテリアリティ評価のプロセスおよび重要であると判定したサステナビリティ関連リスクおよび機会については、経営会議において審議の上、取締役会に報告を行っています。マテリアリティ評価は毎年度実施し、具体的な目標をサステナビリティ行動計画に反映していく予定です。

マテリアリティ評価の結果、当社グループとして優先的に取り組むべき項目を次のように特定しています。

サステナビリティ関連のリスクと機会

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項目 リスク 機会
気候変動
移行リスク
  • 気候変動関連規制への対応や再生エネルギー導入拡大に伴う事業コスト増加
  • 当社製品のエネルギー効率が顧客要求水準を満たさないことによる販売への影響
物理的リスク
  • 気候変動に起因する災害による物流インフラや生産への影響、甚大な損失の発生、事業機会の喪失
  • 環境性能に優れた製品開発による顧客からの信頼性向上を通じた、競争優位性維持と事業成長
  • 主要製品の工期短縮、物流最適化、サプライチェーンのローカライゼーションを通じたエネルギー使用量削減による事業コスト削減および環境負荷軽減
汚染
  • 汚染や対策規制要件を満たすための対応費用や、未処理水等の水域への流出や有害物質等の土壌への流出が発生した場合の対応費用の発生
サーキュラーエコノミー
  • 製品の再利用戦略による、サステナビリティに係る新たなビジネスモデルの創出、ブランドイメージの向上や環境意識の高い顧客の開拓
自社の従業員
  • 会社の魅力低減による人財流出、採用難、それに伴う労働生産性•技術優位性の低下
  • 労働安全衛生管理の不備•怠慢に起因する労働災害•事故による、従業員の安全および事業継続への影響
  • コンプライアンス違反や人権侵害が発生した場合の事業への影響および信用の低下
  • ジェンダーエクイティ推進の不足に起因する従業員エンゲージメントやモチベーションへの悪影響、また、これに伴う効率的な事業運営の阻害
  • 充実した育成制度やワークライフ•バランスによる採用機会の拡大および継続的なトレーニング•研修を通じたさらなる競争力の強化
  • 多様な人材の活用によるイノベーションや成果、課題解決力の向上
  • ポジティブな職場環境の促進および労使間のオープンなコミュニケーションを通じた従業員のコミットメントとパフォーマンスの向上
バリューチェーン内の労働者
  • 児童労働、劣悪な労働環境、紛争鉱物の使用等、サプライチェーンにおける人権侵害に関わる事象に伴う事業への影響および信用の低下

サステナビリティ行動計画2024-2026

中期経営計画は、グランドデザインの達成と、その後も続く持続的な成長のための取り組みです。当社は、事業を通じてサステナブルな社会に貢献するために、2024年度からスタートした第3期中期経営計画(MTP3)では「4つの戦略」を策定しました。
その「4つの戦略」の一つが「サステナビリティの取り組み強化」です。これを推進するために、2024年度にサステナビリティ基本方針を改訂し、この方針に沿った2024年度以降の当社グループのサステナビリティに関する中期的な取り組みの全体像およびそれぞれの中期目標を定める計画として、「サステナビリティ行動計画2024-2026」を策定しました。
サステナビリティに関する新たな中期的な行動計画の策定にあたっては、グランドデザインおよび第3期中期経営計画(MTP3)と連動した取り組みとなるよう、取り組むべきテーマをステークホルダーへの提供価値拡大という観点に基づくものへと全面的に再編するとともに、各テーマに対する中期目標を新たに設定しました。当社は、「サステナビリティ行動計画」において個々の課題ごとに設定した目標の達成に向け、活動を戦略的に推進しています。なお、当社グループにおける重要性の変化に応じ、「サステナビリティ行動計画」における活動項目および目標は定期的に見直されます。

企業理念・方針の1つである「サステナビリティ基本方針」とマテリアリティ(4つの戦略)の1つである「サステナビリティの取り組み強化」を軸に「サステナビリティ基本方針」を策定しました。これをもとに、重点施策(コーポレート)の中に「サステナビリティ行動計画」を策定しました。

サステナビリティ行動計画2024-2026

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ステークホルダー 重点テーマ 目標 担当CxO*1 KPI 目標値(2026年度) 進捗状況(2024年度)
株主・資本市場 中長期かつ持続的な企業価値向上 さらなる収益の拡大、収益性の向上、資本の効率的活用の追求 CFO MTP3経営指標に準じる MTP3経営指標に準じる 中計期間である3年間の平均として設定したすべての経営指標の目標数値を上回る結果
情報開示の強化 財務情報、非財務情報の適時適切な開示 CFO ESG評価機関等による評価 主要な評価機関による評価の維持・向上 主要な評価機関による評価水準を維持
従業員 多様性の尊重 ジェンダー・ダイバーシティの推進 CHO 女性管理職比率*2 11% 9.7%
CHO 管理職候補(Level 6)における女性比率*3 16% 15.5%
従業員エンゲージメント 魅力ある企業文化の醸成、浸透 CHO 離職率 自己都合離職率がMTP2期間平均(5.9%)を下回る 4.4%
CHO Gallup社サーベイのスコア*4 3.80 3.76
CHO The INTEGRITY Awardノミネーション件数/年*5 400件 465件
人財への投資 健康経営、ウェルビーイング経営、ワークライフ・バランスの推進 CHO 日本:ホワイト500認定*6 日本:ホワイト500認定 認定取得
Advantest Development Frameworkに基づく育成推進 CHO 教育・研修費用 8.0億円 6.8億円
顧客 卓越したソリューションの提供 顧客課題を解決する新製品や統合ソリューションの提供 CTO マーケット・ポジション 注力市場における業界No.1の維持 維持
顧客満足度向上と顧客との信頼関係強化 高付加価値かつ包括的なサポートを迅速かつ正確に提供 CCRO マーケット・ポジション 注力市場における業界No.1の維持 維持
気候変動対策・環境負荷軽減 製品の環境性能向上 CTO ATイノベーション当たりのGHG排出量の削減率*7 86%削減(FY2021-FY2023の平均値とFY2024-FY2026の平均値との比較) 84%削減
CCRO 環境性能向上した製品を含むATE製品におけるMarket Share 58%以上 58%
CSRO 製品ライフサイクルアセスメントの強化 管理範囲の拡大とデータ精緻化 取り組み開始
サプライヤー サプライチェーンにおける人権の尊重、公正な取引 責任ある鉱物調達 CSCO 紛争鉱物調査に関する取引先からの回答の回収率 99% 99%
サプライチェーンにおけるサステナビリティの浸透 CSCO 指定取引先に対するデュー・ディリジェンスの実施率*8 100% 100%
CSCO 指定取引先の社数*8 50社(指定取引先2023年度実績42社)*8 44社
温室効果ガス排出削減(スコープ3) サプライチェーンの脱炭素化 CSCO 主要取引先に占める再生可能エネルギー導入率*9 60% 52%
パートナー イノベーションの創造、ローカルコミュニティ・グローバル社会への貢献 イノベーションやソーシャルグッドに関わる活動の実施 CSRO 戦略的パートナーシップの件数 2023年度時点の水準を維持 維持
CCO 従業員が行った地域貢献活動の件数(業務内外問わず) 180件(2024年度~2026年度累計) 90件
地球環境 温室効果ガス排出削減(スコープ1+2) スコープ1+2におけるGHG排出量削減 CSRO GHG排出量削減率 65%減(2018年度比) 76%減
再生可能エネルギーの導入 CSRO 再生可能エネルギー導入率 80% 87%
主要製品の工期短縮を通じたエネルギー使用量削減 CSCO 生産プロセスの見直しによる生産工期削減率 20%減(2020年度比) 40%減
サーキュラーエコノミーへの貢献 3Rの推進によるリサイクル率の向上
3R:Reduce/Reuse/Recycle
CSRO 廃棄物リサイクル率(日本・海外) 日本: 90%以上
海外: 73%以上
94%
67%
全社の水使用量を2016年度の水準に維持する 水資源使用量 288,000m3/年 以下 297,771m3/年
生物多様性や自然資本の保全 生物多様性の保全、自然保護活動の推進(ビオトープでの絶滅危惧種の保護、植林、ビーチクリーン等) CSRO 自然資本に関する社会貢献活動の参加人数 延べ600名
(2024年度~2026年度累計)
2,449名
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重点テーマ 目標 担当CxO*1 KPI 目標値(2026年度) 進捗状況(2024年度)
ガバナンス 責任ある事業活動の徹底 国際/業界基準への対応 CSRO ビジネス行動規範およびマネジメントシステム規格への準拠 認証取得済ISOの維持・更新、RBA(Responsible Business Alliance)監査合格 ISO認証取得済維持・更新
RBA監査合格
GCEP(全従業員を対象としたe-learning)の実施 CCO e-learningによる受講率 100% 96.4%
公正かつ透明性の高い職場の実現 CCO コンプライアンスサーベイ*10における『内部通報窓口の利便性が向上した』との回答率*11 50%以上 82.8%
労働安全衛生の維持・向上 CHO 重大な(休職に至る)労働災害発生率(LTIR:Lost Time Incident Rate) 0 0.35
サステナビリティに関する社内理解の醸成 CSRO レイヤー別のサステナビリティ理解促進施策実施 施策の実施 実施
コーポレートガバナンスの高度化 実効性強化に向けた取締役会機構・統治の高度化 COO 取締役会の実効性確保 実効性評価結果の開示の充実 実効性評価結果をCG報告書にて開示
COO 経営戦略、事業環境に即し必要となるスキルセットと多様性を充足する取締役会構成 取締役会における定期的な確認および必要に応じた見直し 取締役会にて確認
リスクマネジメントの強化 内部統制の徹底 CCO 年2回のリスクレビューに基づくリスクの明確化と改善 年2回のリスクレビューの実施 年2回実施
  • *1
    CxO一覧は、「取締役・執行役員」に記載しています。
  • *2
    女性管理職比率および労働者の男女の賃金の差異は、2025年3月期有価証券報告書「第1 企業の概況 5.従業員の状況」に記載しています。
  • *3
    当社グループの資格制度はグローバル共通で10段階で、Level 6は一般社員層の最上位の資格です。
  • *4
    グループ全体でのサーベイは3年に1回実施しています。
  • *5
    INTEGRITYを体現している従業員を他の従業員の推薦により称える表彰制度です。
  • *6
    ホワイト500が日本における認定制度であるため当社および国内子会社が認定の対象となっています。
  • *7
    ATイノベーション当たりのGHG排出量とは、スコープ3 カテゴリー11のGHG排出量をATイノベーション(アドバンテストのシェアに基づくトランジスタ数、各年の売上の8割を占めるシステムにおけるピン数、周波数、DPS電流、システム台数)で割った値となります。
  • *8
    取引金額ベースで上位85%を占めるTier1サプライヤーおよびそれらの主要サプライヤーであるTier2サプライヤーに対してデュー・ディリジェンスを実施します。これらのサプライヤーを指定取引先として定めています。
  • *9
    取引金額ベースで上位85%を占めるTier1サプライヤーを主要取引先と定めています。
  • *10
    グループ全体でのコンプライアンスサーベイは3年に1回実施しています。
  • *11
    全従業員が内部通報窓口の利用を希望するものではないことを踏まえ、内部通報窓口の利便性向上について「知らない」とした回答を除き算出しております。
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