中長期経営方針

2024年6月25日更新

当社グループは、経営理念である「先端技術を先端で支える」を体現する会社であり続けるため、長期的にどうありたいか、そしてそのために何をなすべきかを定めた10年間の中長期経営方針「グランドデザイン(10年)(2018年度~2027年度)」を2018年度に策定しました。そしてこの「グランドデザイン」で描いたありたい姿を実現すべく、2018年度以降、「第1期中期経営計画(2018~2020年度)」と「第2期中期経営計画(2021~2023年度)」の2つの中期経営計画をこれまで推進し、業容を想定以上に拡大することができました。

しかし将来に目を転じれば、半導体市場および半導体テスト市場は2018年の「グランドデザイン」策定時に予想した方向に概ね沿って推移しているものの、現下の生成AIの急速な普及に代表されるように、半導体やエレクトロニクス関連産業はダイナミックに進化し続けています。また、当社グループが対応すべきサステナビリティ関連の課題も、過去に想定したよりも急ピッチで対応の強化・深化が求められていくと思われます。当社グループが今後さらに発展を遂げるためには、より長期の視点に基づく経営方針が必要な状況にあると判断し、「グランドデザイン」の時間軸を延長するとともに、その内容をこれまでの経営・事業体制の変化や最新の長期事業環境見通しを踏まえたものへ更新することといたしました。

さらに改定したグランドデザインに則り、2024年からの3年間に向けた「第3期中期経営計画(2024年度~2026年度)」を策定しました。

1.「グランドデザイン」2024年度改定版

最新の長期事業環境見通しを下敷きとしつつ、どうすれば当社グループが顧客や社会にとって価値ある存在であり続けるかを、改めて見直しました。その結果として、今後当社グループがありたい姿を示すビジョン・ステートメントを下記の内容に更新しました。また、当社グループが主要なステークホルダーに対して提供すべき経済的・社会的価値を改めて定義し、それら提供価値の拡大を当社グループの経営における長期的な目標とすることを決定しました。

ビジョン・ステートメント

半導体バリューチェーンで最も信頼され、最も価値あるテスト・ソリューション・カンパニーへ
(Be the most trusted and valued test solution company in the semiconductor value chain)

当社グループは、提供価値の拡大を通じ、すべてのステークホルダーから半導体バリューチェーンで最も信頼され、最も価値あるテスト・ソリューション・カンパニーとなることを目指します。

経営における長期的目標

半導体は、サステナブルな社会の実現や多様な産業の発展に向けて今後も不可欠な存在とされています。そして現在の当社グループにおけるほぼ全ての事業は、より性能に優れた半導体の実現と普及に深く結びつくものとなっています。このことから当社グループが経営理念に基づき、先端の技術開発を通じてより良い半導体の開発と普及に寄与していくことは、自社の持続的な成長のみならず、さらなる「安全・安心・心地よい」社会実現に向けても直接的に貢献する行為であり続けると考えます。

この考えに基づき、今後当社グループは、「グランドデザイン」のもと、テストの複雑化への対応などを含めた顧客課題の解決を軸としながらサステナブルな社会実現につながる取り組みを推進し、それを通じて各ステークホルダーに対して提供する経済的・社会的価値を多面的かつバランスよく拡大することを当社グループの経営における長期的な目標とします。

2.第3期中期経営計画(MTP3、2024~2026年度)の概要

半導体テスト関連市場は、短期的なダウンサイクルを織り込みつつも、中長期的に成長を続けると見込んでいます。MTP3期間においてもそのシクリカルグロース構造に変化はなく、目下の半導体テスト関連市場は調整局面を未だ脱しきれていないものの、2024年度から再び成長サイクルを迎えると見込んでいます。また、半導体市場の拡大に加えて半導体の複雑性への対応が業界における構造課題となる中で、当社グループの事業機会は中長期的に拡大するものと考えています。そうした環境下、当社グループは新たに策定したビジョン・ステートメントに沿い、下記の4つの戦略を推し進めることで中長期的なステークホルダーへの提供価値拡大に取り組みます。

戦略

1. Outpace the growth in our core market (コア市場の成長率を上回る成長実現)
これまでの成長戦略に沿い、当社グループは事業領域を年々拡大してまいりました。その結果、かつては半導体テスタ(ATE)市場が注力すべき市場の大半を占めていましたが、MTP3以降はATEを中核としつつも、これまで広げた領域をコア市場としながらさらなる成長に取り組みます。この拡大したコア市場においては今後、半導体の生産量増加、半導体の高性能化対応、そして半導体の複雑性進行への対応が重要な成長機会となると想定しています。これに対しては、個々のテスト・ソリューションの性能向上に加え、顧客に“Automation of Test”、すなわち半導体テストの効率性向上をもたらす新たな価値を、当社が擁する多様な製品・ソリューション群の有機的な結合や社外パートナーとの連携などを通じて創造します。これらにより、当社の今後のコア市場において、市場成長率を上回る事業成長を引き続き実現することを目指します。

2. Expand adjacently / new businesses (近縁市場・新規事業領域への展開)
半導体の高性能化や複雑性が進行する中では、より広く、統合されたテスト・ソリューションが望まれます。当社グループはこれまでもシステムレベルテストやテスト周辺機器への事業展開を進めてきましたが、今後もこのアプローチを継続することで顧客への提供価値をさらに拡大します。具体的には、当社製品のインストールベースを活用したフィールド・サービスやAdvantest Cloud Solutions™の販促に取り組むほか、Applied Research Teamによる事業機会創生にも挑戦します。

3. Drive operational excellence (オペレーショナル・エクセレンスへの取り組みを推進)
当社グループは、Chief Technology OfficerをはじめとしたCxOがグループ全体のオペレーションを管掌するCxO体制へ既に移行しています。今後、各CxOの強いオーナーシップのもと社内技術の活用を部門横断的に進めることで、半導体業界におけるテスト課題を解決していきます。また、当社グループのステークホルダー全てにとって価値がある企業となるためには、製品や技術面の優秀さだけではなく、あらゆるオペレーションの効率性と効果性を高めていく必要があると認識しています。それに向け、DXを通じた社内オペレーションの迅速化と省人化、強靭なサプライチェーンの構築、有能人財の登用や社員教育の拡充などによる人的資本強化、AIやデータ・アナリティクスを活用した社内生産性向上などに取り組みます。

4. Enhance sustainability (サステナビリティの取り組み強化)
当社グループにおける長期的な経営の目標は、ステークホルダーに対する提供価値をバランスよく多面的に拡大することにあります。気候変動や人権問題をはじめとするサステナビリティ課題に対する能動的かつ積極的なアクション、法令遵守や企業倫理の徹底を含めた責任ある事業活動の遂行、リスクマネジメントの強化やコーポレート・ガバナンスの高度化などを通じて企業価値向上基盤をさらに強化するとともに、各ステークホルダーからより厚い信頼を得られるよう努めます。これらによりサステナビリティ、すなわち現在の生活水準を維持しつつ、未来の世代が同等またはそれ以上の生活水準を享受できるようにすることに貢献します。またサステナビリティに関する取り組みの推進にあたっては、その根源となるものは企業内の共通カルチャーや価値観であることから、これらの醸成と浸透にも努めます。

経営指標

MTP3では、上記の4つの戦略を通じて収益拡大、収益性改善、資本効率向上を図ることで、企業価値の向上に取り組みます。これに沿い、MTP3において重視する経営指標を売上高、営業利益率、当期利益、投下資本利益率(ROIC)、基本的1株当たり当期利益(EPS)とし、これらの向上に努めます。なお各指標の進捗を中長期視点で評価するため、経営指標には市場変動の影響を平準化できる3か年平均の値を用います。

MTP2(2021~2023年度)平均実績 MTP3(2024~2026年度)平均目標※1
売上高 4,879億円 5,600~7,000億円
営業利益率 24.7% 22~28%
当期利益 933億円 930~1,470億円
投下資本利益率※2(ROIC) 21.2% 18~28%
基本的1株当たり当期利益(EPS) 124円 127~202円
  1. MTP3財務目標値の前提とした為替レートは1米ドル=140円、1ユーロ=155円
  2. 投下資本利益率:NOPAT÷投下資本(期首・期末平均)。NOPAT:営業利益×(1-税負担率25%)。投下資本:借入金+社債+資本合計(リース負債含まず)

コスト・利益構造

優れたテスト・ソリューションの開発と販売促進、サプライチェーン・マネジメントや製造オペレーションの最適化などを通じ、売上総利益率の改善に取り組みます。また研究開発投資や人的資本強化投資など、持続的な価値創造の源泉となる費用については積極的に投下する一方、DX化などの経営効率や業務生産性を高める施策を展開することで収益構造の継続的な改善に努めます。他方で、世界経済や当社の市場環境における将来の不確実性は高い状態にあります。環境変化に即した機動的な財務マネジメントを遂行していくことで、上記経営目標の達成に努めます。

資本政策、株主還元

資本政策として、研究開発、設備増強、M&A等の成長に向けた事業投資を優先します。半導体市場の長期的拡大と半導体のさらなる高性能化に即して当社グループの将来キャッシュ創出力が拡大するよう、MTP3期間中に予想される累計6,000億円以上の営業キャッシュ・フロー(研究開発費控除前)を、中核事業におけるオーガニック成長投資ないしノン・オーガニック成長投資、および近縁市場への事業展開の加速に振り向けます。また、資本効率と資本コストに配慮したバランスシート管理の見地から負債(デット)も柔軟に活用してまいります。さらに経営基盤の強化および持続的企業価値創造のために財務健全性を維持した上で適正な資本構成を図る方針であります。

2024年4月から始まるMTP3の3年間における株主還元方針は、安定した事業環境を前提として、配当については1株当たり通期30円を最低限とする方針のもと、安定的・継続的な配当実施に努めてまいります。総還元性向*に関しては、MTP3期間の3年間合計で50%以上を目途といたします。

また手元現金水準については、平時における目安を1,000~1,200億円と見積もっています。成長投資や運転資本への資金需要を超えて余裕資金が生じる場合は、配当や自己株式取得を通じて株主に還元します。

  • *
    総還元性向:(配当額+自己株式取得額)÷連結当期利益

2024年6月25日発表資料

  • 動画は日本語および英語で配信しております。通訳による音声は、投資家の便宜を図る目的から提供しているものです。オリジナル音声と通訳音声での解釈に相違がある場合、オリジナル音声が優先します。

(音声配信期間:2024年6月25日~2025年6月24日)

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