当社グループの事業は、半導体設計製造会社(IDM)、ファブレス半導体企業、ファウンドリーおよびテストハウスの設備投資に大きく依存しております。これらの企業の設備投資および一般投資は、主に半導体に対する現在および将来の需要、ならびに半導体を利用した製品に対する需要によって決定されます。かかる需要は世界経済の全体的な状況の影響を大きく受けます。
今日までの経験として、半導体業界の不況時において、一般的に半導体メーカーのテストシステム投資を含む設備投資は、半導体の世界的な出荷額の減少率よりも大きく減少します。半導体業界では、過剰在庫の時期が繰返し発生するなど今まで周期的な動きを示しており、そのことが当社グループの製品を含め、半導体業界のテストシステムに対する需要にしばしば深刻な影響を与えてきました。
近年の半導体の複雑化に伴い、信頼性確保の必要性が増大し、同時にテスト効率改善の難易度も高くなる傾向にあり、テスタ需要は今後、持続的に増加することを予想しておりますが、国際政治情勢の大きな変化や深刻な感染症の蔓延等による世界経済への影響による半導体需要変動、テスタ需要変動のリスクは有しています。
世界的な半導体市場は、2019年は、米中貿易摩擦などの地政学的リスクが招いた世界経済成長の失速が、半導体市場にも大きな影響を与え、その結果、前年比12.0%の減少となりました。2020年は、世界経済が新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)のパンデミックの影響で低迷した一方、半導体市場は在宅時間の増加によるパソコンやタブレット端末の需要増加等、複数のプラス要因がこれを打ち消しました。その結果、前年比6.8%の増加となりました。2021年は、世界経済が引き続きCOVID-19の影響を受けつつも徐々に活発化する中、半導体市場は前年の堅調な成長の流れを引き継ぎ幅広い用途で需要が強く、高成長となりました。その結果、前年比26.2%の増加となりました。
SoC半導体の世界的売上は、2019年は、不確実な経済情勢の中で最終製品需要や設備投資が減衰したものの、スマートフォン用の半導体需要が通年継続したため、前年比3.6%の減少にとどまりました。2020年は、リモートワークの拡大やスマートフォン高性能化を背景に堅調な需要環境が続きましたが、一方で米中摩擦先鋭化が影響し、前年比7.4%の増加にとどまりました。2021年は、HPCなどの最先端プロセス品の堅調な成長に加え、車載・産業機器・民生向け半導体の需要拡大により前年比26.8%の増加となりました。
メモリ半導体の世界的売上は、2019年は、メモリ半導体の在庫過剰感から前年比32.6%の減少となりました。2020年は、データサーバーやゲーム機器関連が伸び、前年比10.4%の増加となりました。2021年は、メモリ半導体の大容量化の進展、高速化、高性能化が堅調に進展し、前年比30.9%の増加となりました。
半導体市場の顕著な需要の変動は、以下の様々な要因から影響を受けます。
- 世界経済の全体的な状況
- 半導体業界の動向
- 通信インフラ投資の水準およびスマートフォンやウエアラブル機器などの通信機器端末の需要の動向
- データセンター、パソコンおよびサーバー業界の需要
- テレビ、ゲーム端末、VR(バーチャルリアリティ)/AR(拡張現実感)機器を含むデジタル・コンシューマー機器に対する消費者の需要
- 自動車、ロボティックスおよび医療機器などの産業機器市場の動向
2019年度の当社グループは、大手半導体メーカー各社において半導体高性能化への取り組みが積極的に進められたことにより、半導体試験装置の需要が喚起され、とりわけ先端プロセスを用いたスマートフォン用の半導体向けで高水準な試験装置需要が通年継続しました。しかしながら、メモリ半導体の在庫過剰感から、メモリ・テスタ市場は大きく縮小しました。その結果、売上高は前年比2.3%減少の275,894百万円となりました。損益面については、売上総利益率は前年を上回ったものの、将来の成長基盤強化として研究開発やサポート人員のリソース強化のため販管費が増加したことにより、親会社の所有者に帰属する当期利益は前年比6.1%減少の53,532百万円となりました。
2020年度は、コロナ禍の中でも半導体試験装置事業においてリモートワークの普及や巣ごもり消費の拡大を背景にデータセンターやゲーム機器関連の需要が持続したことに加え、スマートフォン関連領域において端末性能の競争を背景に生じた新規試験装置需要の取り込みに努めました。その結果、売上高は前年比13.4%増加の312,789百万円となりました。損益面については、売上総利益率の良い製品群の売上構成比が減少したものの、事業譲渡益やドイツ子会社の年金制度を統一した確定給付型年金制度へ移行したことに伴う利益など一過性の利益約81億円を計上したことにより、親会社の所有者に帰属する当期利益は前年比30.4%増加の69,787百万円となりました。
2021年度は、半導体市場の活況を受け、半導体試験装置に対する需要も拡大が続きました。とりわけデータセンターやスマートフォン向けのハイエンドSoC半導体に対し先端技術投資が促進されたことで、SoC半導体用試験装置市場が力強く成長しました。このような環境下で、当社は、強みとする幅広い製品ポートフォリオとグローバル販売・サポート網を活かし、拡大する半導体試験装置需要を着実に取り込みました。その結果、売上高は前年比33.3%増加の416,901百万円となりました。損益面については、親会社の所有者に帰属する当期利益が前年比25.1%増加の87,301百万円となりました。当期利益における前年比増加率が緩やかであるのは、前年度において、日本での繰越欠損金使用および、繰延税金資産約100億円の計上に伴う税金費用の減少があったことによります。
以上のように当社グループの業績は、引き続き半導体業界の顕著な需要変動に大きな影響を受けると考えられます。そのため、半導体業界における大規模な不況が発生した場合、過剰な在庫を抱えたことによる棚卸資産の評価損など当社グループの財務状況と事業成績に、悪影響を及ぼすこととなります。