生物多様性への取り組み

アドバンテストグループ生物多様性行動指針

アドバンテストグループでは、生物多様性がつくり出す自然の恵みに感謝し、生物多様性が豊かで健全な社会を支える大切な存在であるという認識のもと、生物多様性の保全と生物資源の持続可能な利用に取り組んでいきます。

  • 1.環境影響の把握
    自らの事業活動の全ライフサイクルの中で、生物多様性へ著しい影響を与える側面を把握・評価し、共有します。
  • 2.生物多様性への理解
    事業活動や日常生活の中で、生物多様性に配慮した行動を行うことのできるよう、全従業員に対し、生物多様性についての理解と意識の向上を図ります。
  • 3.環境影響の低減
    効果の高い施策を検討し、継続的に実施することで、自らの事業活動が、生物多様性に与える影響を低減します。
  • 4.ステークホルダーとの連携
    行政や教育機関、NPO、地域住民、取引先など、さまざまなステークホルダーと連携を図り、生物多様性保全活動を推進します。

「生物多様性のための30by30アライアンス」に参加

アドバンテストは、2022年4月、「生物多様性のための30by30アライアンス」に参加しました。ネイチャーポジティブというゴールに向け、ビオトープの適正管理や自然保護をとおして生物多様性の保全に貢献してまいります。

* 生物多様性のための30by30アライアンス:2030年までに陸と海の30%の保全を目指す国際約束である「30by30」の国内達成に向けて、環境省を含めた産官民17団体が発起人として設立された有志の連合。

生物多様性のための30by30アライアンス ロゴ

ビオトープ

ビオトープ正面

上空から見たビオトープ

アドバンテストは、自然との共生をテーマに、失われつつある昔ながらの関東平野の原風景の復元を目指し、2001年に研究開発拠点である群馬R&Dセンタに、総面積17,000m2の国内企業では最大級のビオトープを創設しました。

アドバンテスト・ビオトープは、従業員が地球環境の大切さを学ぶ環境教育の場として、また、地域住民とのコミュニケーションの場として活用されています。創設から21年を経た今では、地域の生態系保全に最適な環境となり、絶滅危惧種の保護育成に大きな役割を果たしています。またSDGsの目標「15 陸の豊かさも守ろう」という観点からも、アドバンテスト・ビオトープは理想的な環境となっています。

* ビオトープ(Biotope):ギリシャ語で、生物を意味する「Bio」と、場所や地域を表わす「Tope」とを合成した言葉。

貴重な植物の保護育成の場

ビオトープでは、2001年の創設以来、群⾺⼤学のご指導のもとビオトープに⽣息する動植物の調査/保護/育成および外来種の駆除を⾏っています。また、国準絶滅危惧、群馬県絶滅危惧IAであるフジバカマおよびアサザの保護育成にも努めています。

なかでもフジバカマは、群馬県に自生地が5箇所しか残っておらず、そのうちの1箇所がアドバンテストのビオトープです。長年にわたり継続してきた保護育成の取り組みが、安定した自生環境の実現に繋がっています。

また、現在は県内で自生地が1箇所しかないアサザは、アドバンテスト・ビオトープが安定した環境であることから、2012年から避難先として利用され、順調に育成されています。

さらに2019年度からは、群馬県で絶滅危惧IAに指定されているチョウジソウを県内の自生地から一部緊急避難させ、保護・育成を開始しています。

  • フジバカマ

  • アサザ

  • チョウジソウ

ビオトープのCO2固定速度を算定開始

ビオトープの樹高を測る様子

アドバンテストは2020年度から、ビオトープ内の林におけるCO2蓄積量およびCO2固定速度を算定する取り組みを再開しました。これは群馬大学との共同研究の一環で3年間にわたり行います。
2021年度は、落ち葉の重量測定に加え毎木調査を行いました。レーザー樹高測定器や測竿(樹高を測るポール)を用いて、林内の樹木約600本の樹高と胸高直径を測定しました。今後その値からCO2固定量を算出します。そして前回10年前に行われた調査結果と今回の調査結果を比較し、ビオトープの林が10年間でどれくらいCO2を蓄積し、どれくらい変化したかを報告する予定です。

落葉の重さ、樹木の体積からCO2蓄積量と放出量を推定

専用ネットで落葉を回収

光合成により樹木に吸収されたCO2は、樹木の体内に炭水化物として蓄積されます(炭素固定)。樹木が成長すると体内に蓄積される炭水化物も増え、樹木の体積が増します。葉も生産されますが、葉は1〜3年で枯れて落葉となって地面に落ちます。よって、一定の時間間隔をおいて樹木の体積と落葉の重量を測定すれば、その間に樹木がどのくらいCO2を固定したか(=炭素固定したか)が推定できます。一方、落葉は土壌で微生物により分解され、蓄積されていた炭水化物はCO2となって大気中に戻り、そのぶん落葉の重さは減ります。よって、一定の時間間隔をおいて土壌上にある落葉の重量を測定すれば、落葉の重量減少(分解量から、大気中へのCO2放出量)が推定できます。

ビオトープでは、複数個所に専用ネットを置き、落葉の重量および分解量を測定しています。樹木の体積は、一本ずつ直径と樹高を測定して求めています。これらのデータを基にしてビオトープ内の樹木としてのCO2蓄積量、落葉としてのCO2蓄積量、および落葉からのCO2放出量を推定し、その収支が林全体でのCO2蓄積量となります。このCO2蓄積量を、前回調査した10年前の値と比較することで、ビオトープ内の林全体でのCO2固定速度を算定します。

群馬大学情報学部 石川真一教授よりメッセージ

ビオトープは、身近な自然の再生や環境教育の場、絶滅危惧種の系統維持など、生物多様性の保全において重要な役割を担っています。アドバンテストのビオトープは、周辺に生態系が豊かな休耕田が多く存在するなど、環境にも恵まれていることから、フジバカマやミゾコウジュといった絶滅危惧種の生育にも適した場所となっています。2021年度は在来種111種、外来種34種が確認され、ビオトープの目標となるべき里山の植物も確認されていることから、アドバンテストのビオトープは生物の保護上からも重要性の高い場所であると言えます。

2020年度からは、地球温暖化対策としてビオトープの林におけるCO2固定速度の算定を再開しました。今後もCO2吸収や植物の保護育成を通し、アドバンテストのビオトープが生物多様性の保全においてますます重要な役割を果たすことを期待しています。

群馬大学情報学部 教授 石川真一