ビオトープだより 第7号

ビオトープだより No.7

そもそもドングリとは?

シラカシのドングリ。矢印の所が殻斗

ドングリは、ブナ科のコナラ亜科およびクリ亜科の一部の種にできる実を指します。実の一部または全体をおおう、苞(ほう:花のつぼみを包む葉)が変形してできた殻斗(かくと)と、非常に固い茶色の果皮が大きな特ちょうです。

縄文遺跡で発くつされた土器の中から炭化したドングリが見つかるなど、日本の里山では古くから食料として利用されてきました。日本人にとってドングリは、唱歌「どんぐりころころ」をはじめ、郷土料理や民芸品などでとても身近な存在です。

クリもブナ科クリ亜科に属し、殻斗(実をおおうトゲ状のイガイガ)と果皮という特ちょうを持っているので、ドングリと呼んでもよさそうに思えます。にもかかわらず、ドングリと明確に区別されているのは、クリがとてもおいしいということ以外にさしたる理由はなさそうです。

ドングリと生物多様性

チョッキリが穴を開けたドングリ

ドングリ拾いをしていると、小さな穴が開けられ、中がからっぽのドングリに出会います。ドングリには、チョッキリをはじめさまざまな虫がタマゴを産みつけます。発芽したやわらかい部分から、ガの幼虫が食べながらドングリの中に入ることもあります。このようにドングリの実は、多くの虫たちに住みかを提供しています。

また、鳥類やネズミ、リスなどの小型の動物はもちろん、サル、イノシシ、シカなどの動物たちにとっても、ドングリは冬に備えるための大切な栄養源です。体の大きなクマでさえも、冬みん前に木の上に登り、枝をたぐり寄せてドングリを集めることがあります。もし森の中で、木の高い所に何本もの枝が折り重なっている「クマだな」を見つけたら、近くにクマがいるかもしれないので、静かにその場をはなれましょう。

ビオトープのドングリたち

アラカシ、シラカシ  ブナ科コナラ亜科コナラ属コナラ亜属

「カシの木」と総じて呼ばれるこれらの種は、ブナ科コナラ属の中の常緑樹が多く当てはまります。材質の固い木が多く、建築用材などによく使われます。ドングリは、輪を積み重ねた層状の殻斗が特ちょう的です。
なお、英語ではLive Oakと言い、Oakはナラ(コナラと同様に落葉樹)を指します。

左)アラカシの木
中)シラカシの木。写真の木は若く背たけが高くありません。
右)アラカシ(右)とシラカシ(左)の葉の裏とドングリ。シラカシの葉の方がやや細長く、アラカシの葉の裏はやや黄色を帯びて見えます。

スダジイ  ブナ科クリ亜科シイ属
マテバシイ  ブナ科クリ亜科マテバシイ属

「シイの木」で総称されるこれらの木は、ブナ科クリ亜種シイ属またはマテバシイ属に属します。シイ属のドングリは実が殻斗で完全におおわれるのが特ちょうです。種によっては生でも食べることができ、里山と親和性の高い木です。日本では暖かい地域に多く分布し、群馬県に位置する当ビオトープにはあまり多くありません。

  • スダジイの木

  • スダジイのドングリ

  • マテバシイの木

  • マテバシイのドングリ

クヌギ、コナラ、ミズナラ  ブナ科コナラ亜科コナラ属コナラ亜属

カシやシイが常緑樹なのに対し、これらの木は落葉樹です。クヌギのドングリは殻斗がドレッドヘアの様にモジャモジャしています。一方コナラやミズナラのドングリは殻斗がつぶ状で大仏様の頭に似ています。
ビオトープでは昨年から、クヌギやコナラの原木を使ってシイタケを育てています。早ければ2018年秋には収かくできる予定です。

左)クヌギの木
中)クヌギの木の表面、とてもゴツゴツしています。
右)クヌギのドングリ

  • コナラの木

  • コナラの木の表面

  • コナラのドングリ

左)ミズナラの木。本来は寒冷地や山間部に生える木です。ビオトープ造成当初はそうした知識がなく、ミズナラなど地域の特性とは若干異なる種も植樹し今に至っています。
中)ミズナラの葉。コナラに比べて大ぶりです。
右)ミズナラのドングリ

参考資料
星野義延、飯村茂樹、岡崎務(2012年)「どんぐりころころ大図鑑」PHP研究所

ドングリを食べてみた

ドングリには渋い味のするタンニンが含まれ、食べることができるとされるドングリも、そのほとんどが何度もアクを抜く必要があります(例えばトチもちに用いるトチの実)。
しかし、スダジイの実はアクが少なく食べやすいということで、今回のビオトープだよりでは、スダジイのドングリを拾って、さまざまな方法で食べてみました。

材料のドングリを集める

スダジイは西日本で多く自生する一方、東日本には少ないとのことです。ビオトープは群馬県に位置するにも関わらず、幸いにも3本のスダジイが生えており、その根元や落ち葉の下には大量のドングリが落ちていました。

スダジイのドングリの一部は、殻斗が全体を包んだまま落ちています。独特の形状なので識別もかんたんです。殻斗からはずれて落ちたドングリは、他のドングリより黒っぽい色のものが多いですが、個体差もあります。

芽ぶいたスダジイのドングリ。

殻斗をむいたスダジイ(左)と、残った殻斗(右)。子どもでもかんたんにむけます。

鍋に水を張ってスダジイを入れます。虫食いなど食用に適さないものは水にうかぶので取り除きます。

残ったスダジイをかわかします。この日は天気が良く、30分ほど天日にさらすだけでほぼかわきました。

ドングリを食べてみた:そのままで、ゆでて、煎って

まず、スダジイを生のまま食してみます。
果皮は非常に固いので、歯でかんで割ります。
味はというと、アクはなく食べられるけど、味も風味もとぼしくただそれだけ。3個4個と続けて食べたいとは思わない、が正直な感想。

次にスダジイをゆでて食べます。お湯を張った雪平鍋(ゆきひらなべ)をコンロにかけ、スダジイを投入。

5分ゆでたものは、まだちょっと固くて生食と大差なし。
10分ゆでると、わずかながら味や香りが立ってきて、少し食べ物らしくなってきた感じ。
20分ゆでたら、逆にふやけてしまい味も香りもダメ。
いずれも、ゆでて食べるのは「生食より少しマシ」な程度。

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今度は煎(い)って食べます。加熱したフライパンにそのままスダジイを並べます。

5分ほどすると、香ばしいにおいが立ちこめてきます。そして「パリッ」という音とともに、スダジイの果皮にヒビが入ります。元気のいいスダジイはフライパンの外に飛び出し、まるでポップコーンのよう。

煎ったスダジイは大人なら苦労なく果皮をむけます。

むいたスダジイの果皮と中の実。味も香りも、生食やゆでたスダジイよりツーランクは上です。これなら、テレビを見ながら果皮をむいて食べるのもアリかと思います。

ドングリクッキー作りにチャレンジ

スダジイの果皮をむいたら、いよいよクッキー作り開始です。

【材料】

スダジイ 100 g (果皮をむいた状態)
小麦粉 50 g
砂糖 25 g
卵(卵白) 1個
バター 8 g (給食用など小分けのバター1個)

1.スダジイをフードプロセッサーまたはブレンダーで粉にします。 粉が細かいほど、食べやすい食感になります。今回はハンディ・ブレンダーを使用し、スダジイ100gを適度な粉にするのに約6分要しました。時間と共に手の力がなくなりつらかったですが、根気良く続けました。

2.生地(きじ)を作ります。砂糖、卵白、バターをビニールぶくろに入れてよく混ぜ、次にスダジイの粉と小麦粉を加えて混ぜた後、適度な大きさ、うすさにします。

3.生地をフライパンで焼きます。油を使うと後片付けが大変なので、今回はクッキングシートを使いました。フライパンのふたはアルミホイルで代用しました。

4.焼け具合を見て時々表裏をひっくり返し、ほどよく焼けたら完成です。右の写真は50gのスダジイからできたクッキーです。

食べてみると…これがとてもgood!
ドングリクッキーならではの風味と食感に加え、甘さもほどよくとても食べやすい。
焼いた翌日は少し固くなってかみづらくなるものの、ドングリの風味はそのまま保たれ、おいしく食べることができました。

5.この記事を書きながら食べました

ドングリクッキー作りの心得

  • フードプロセッサーまたはブレンダーの使用がおすすめ!

    縄文時代に思いをはせ、石などを使ってスダジイの実をすりつぶすのは、その志はすばらしいですがとても大変な作業です。また、粉がきめ細かいほど食感が良くなります。

  • 果皮むき作業は気長に

    煎ることで多少むきやすくはなるものの、ドングリクッキー作りのプロセスで最も時間と労力を要します。数人で集まっておしゃべりしながら作業するのがおすすめです。

  • バターはやわらかくする

    冷えた状態だと固まって混ぜづらいので、あらかじめ冷蔵庫から出しておきましょう。

  • 早めに食べよう

    時間がたつとともにどんどん固くなります。


ビオトープの池にカモが飛来

今年もビオトープの池にカモがやってきました。11月に入って次第に増え、11月20日時点で50羽以上を確認しました。そのほとんどがカルガモですが、例年通りだとこの後コガモも飛来し、最終的には100羽近くに達する見通しです。