ビオトープだより 第8号

ビオトープだより No.8

早春の花をささえる風と鳥

メジロ(写真)は受粉を仲立ちする代表的な鳥です

植物の多くは、花粉がめしべなどの器官に着く「受粉」によって種子を作ります。植物は自ら動けないので、動物や風など、周囲の力を借りて花粉を運んでもらいます。

動物の力を借りる花は、色や形を目立たせ、強いかおりと多くのみつを出して虫や鳥を引き寄せます。特に、鳥が受粉を仲立ちする花(鳥ばい花といいます)は、鳥がとまれるように大きく、しっかりした作りになっています。

風の力を借りる花(風ばい花)は、虫や鳥を引き付ける必要がないので、花びらが小さいなど地味な外見です。受粉が成功するかは「風任せ」なので、花粉の量を増やして受粉しやすくしています。スギやヒノキなど、花粉しょうを引き起こす花はほとんどが風ばい花です。

冬の終わりから春の初めにかけては、虫の活動がまばらです。鳥ばい花や風ばい花が目につきやすく、カラフルな虫ばい花が増える暖かい季節とはちがった風景が見られます。

ビオトープの春を告げる花(五十音順)

ウメ  鳥ばい花 バラ科サクラ属

いつもの年はビオトープの他のどの花よりも早く開花しますが、今年はややおくれて2月末に満開となりました。

コブシ  虫ばい花 モクレン科モクレン属

高さ15 mくらいまで成長する高木です。遠くからみるとサクラに似ていますが、花の大きさは10 cm近くあります。コブシという名前は、果実の表面がデコボコしていて、「にぎりこぶし」ににていることに由来するそうです。

ツバキ  鳥ばい花 ツバキ科ツバキ属

ツバキには秋から冬の初めにさく種もあり、冬の間によく目にする花ですが、ビオトープのツバキは2月から4月にかけてさきます。サザンカとよく似ていて区別するのが難しいですが、ツバキはさいた後花ごと落ちるのに対し、サザンカは花びらが少しずつ落ちていきます。

  • ツバキ
  • サザンカ

トウダイグサ  風ばい花 トウダイグサ科トウダイグサ属

つぼみの中にいくつもの黄色い花をつけます。派手ではないですが独特な形なので簡単に見つかります。園芸で人気の高いユーフォルビアはドウダイグサの一種です。

フキ  風ばい花 キク科フキ属

多年草で、このビオトープでは花をさかせない年もあります。オスのかぶとメスのかぶは分かれていて、メスのかぶの花は受粉後綿毛をかぶり白くなります。つぼみは「ふきのとう」と呼ばれ、天ぷらなどにして食べますが、しっかりとアクを取らなくてはなりません。

ホトケノザ  虫ばい花または閉そく花 シソ科オドリコソウ属

ハエや一部のチョウは、寒さが残るこの季節でも活動しています。虫ばい花のホトケノザは、かれた草の原っぱにところどころ見えるむらさき色の小さな花です。春の七草の「仏の座」とは別の種で、こちらは食用には向かないそうです。

ホトケノザの一部の花は、花びらが開かず、つぼみの中で受粉します。これを「閉そく花」と言います。一つの花の中での受粉は、確実に受粉できる一方で、遺伝子がかたより生存力が弱まる欠点があり、ホトケノザやスミレなど一部の種でしか見られません。

マンサク  虫ばい花 マンサク科マンサク属

細長く黄色い花びらが特ちょうです。虫が寄ってきそうなあざやかな黄色はレンギョウも同じですが、近くで見ると花の形が全く異なります。このビオトープでは、マンサクは主に3月、レンギョウは主に4月にさきます。

  • マンサク
  • レンギョウ

その他の春を告げる花たち(五十音順)

  • アオキ ガリア科アオキ属
  • スイバ ダテ科スイバ属
  • セキショウ ショウブ科ショウブ属
  • スギナ(ツクシ) トクサ科トクサ属
  • ハクモクレン モクレン科モクレン属
  • ハコベ ナデシコ科ハコベ属
  • ヒメカンスゲ カヤツリグサ科スゲ属
  • ボケ バラ科ボケ属
  • ムラサキゴケ ゴマノハグサ科サギゴケ属
  • ヤハズエンドウ(カラスノエンドウ) マメ亜科ソラマメ属

ビオトープの春の行事:ススキのかりばらいとヨシがり

このビオトープでは、毎年3月にススキのかりばらいとヨシがりを行っています。それまで草木が多くうす暗かった場所に日光が差し込むので、日光を求めてこれまで見られなかった新たな動植物がやってきます。ススキのかりばらいは、ススキをほとんど残してまわりのチガヤなどをかります。残したススキは、鳥や虫たちのかくれ場所になります。
ヨシなどの水生植物は、よごれを吸い取り水をきれいにする効果があります。ヨシがりを行うことで、かれたヨシからよごれが池にもどるのを防ぎます。

  • ススキかりばらい作業
  • ヨシがり作業

大雪のビオトープでイタチを発見

2018年1月22日から23日にかけて、関東甲信越地方は大雪となり、このビオトープにも十数センチの雪が積もりました。そして23日の朝、ビオトープ十数年の歴史で初めてイタチに出会いました。
日本には数種類のイタチが生息していますが、区別するにはしっぽの長さを見ます。このイタチはしっぽが長いチョウセンイタチではなく、短いニホンイタチだと思います。ちなみに、対馬以外の西日本では、チョウセンイタチが特定外来種に指定されニホンイタチをおびやかしますが、北海道ではニホンイタチがエゾオコジョの生息場所をうばいつつあるそうです。

ちなみに、2017年3月にはタヌキを、2013年2月の雪の日にはキツネをそれぞれ見つけました。冬にめずらしい動物に出会うのは、彼らが食料を求めて、ふだんはあらわれない場所や時間帯に行動するからだと考えています。

左:一面の雪景色 右:池はこおりつき、ほとんどのカモがいなくなってしまいました。(後日もどってきました)

イタチ。この写真だとわかりづらいですが、しっぽがあまり長くないニホンイタチと思われます。

アカゲラのさつえいにも成功

2018年2月14日、このビオトープで初めてアカゲラの写真をとることができました。キツツキの仲間では、コゲラを時々目にすることがありますが、山地にいることの多いアカゲラをビオトープで見ることはめったにありません。コゲラよりもやや大きく、木をつつく音もコゲラより大きく激しいです。木をつつく行動は「ドラミング」と言い、巣穴づくりや食べる虫を探すほか、アカゲラ同士のコミュニケーション手段でもあるそうです。

また、キツツキが子育てを終えて立ち去った巣穴は、リスやハチなどさまざまな動物や虫が再利用します。ドラミングが樹木にとって大きなダメージとなることは少なく、むしろ生物多様性をうながしていると考えられています。