従業員エンゲージメント
アドバンテストは、2018年に初めてGallup社によるエンゲージメント・サーベイをグローバル全体を対象に実施しました。その後、新型コロナウイルス感染症の影響により実施を見合わせていましたが、2021年秋に3年ぶり2度目のサーベイを実施しました(次回、2024年実施予定)。
実施の目的
アドバンテストは、すべての従業員が価値を認められ、尊重され、共通の目標を達成するために共に働くという文化を継続的に追求しています。このサーベイの目的は、従業員が私たちの会社や組織についての考えを共有できるような機会を提供することです。 それはマネージャーとチームとの対話を促進し、あらゆる階層の従業員が私たちの会社や組織を改善するためのアイデアを生み出すことにつながります。サーベイの結果は、従業員が自分の仕事や職場環境についてどのように考え、また、会社が従業員をどのようにサポートできているかを知るための1つの手がかりとなります。従業員からのオープンなフィードバックにより強みのある分野と改善が必要な分野を特定することができ、改善のためのアクションを取ることにより、仕事に対するエンゲージメント・レベルの向上や職場環境の改善につなげ、個々の従業員のパフォーマンスを向上させるとともに会社全体としての業績向上を目指します。このような「個人の力」と「組織の力」を両輪とした取り組みは、従業員エンゲージメントだけでなく人的資本の総合力を高めると考えています。
エンゲージメントとは
従業員のエンゲージメントとは、従業員の組織やその目標に対する感情的なコミットメントを示します。エンゲージした従業員は、最低限やるべきことをやるのではなく、熱意を持ってエネルギッシュに、求められたもの以上のアウトプットを目指して仕事に取り組みます。Gallup社の調査によると、従業員は世界全体のうち15%しかエンゲージしておらず、また、従業員のエンゲージメントと次のような指標との間に関連性があることがわかっています。
- 利益、顧客評価、生産性(正比例の関係)
- 離職率、欠勤率、安全問題発生件数、品質問題発生件数(反比例の関係)
調査の結果と今後
2021年度のサーベイは10月12~26日に、その時点で3カ月以上在籍しているアドバンテストグループ全従業員を対象に実施し、回答率は90%でした。Gallup社のプラットフォームを用いており、匿名性を担保したオンライン形式で実施しました。
結果
Gallup社のサーベイにおいてキーとなる12の質問(Q12)のすべての項目において前回からスコアが上昇するなど、大幅な改善が見られるものでした。すべての質問の平均スコアは3.64で、前回から0.16ポイント上昇しました。これはGallup社の調査を複数回受けた企業の中でかなり大きな改善幅です。また、Engaged(熱意のある)従業員の比率は26%で、前回から6ポイント上昇しており、前回浮き彫りとなったRecognition(認める・褒める)や成長に関して意識や機会が低いという課題にも改善が見られました。結果、アドバンテストグループ各社のエンゲージメント・レベルは、各国の標準値と比べるとかなり高いものであることが分かっています。この結果は、従業員一人ひとりがエンゲージメントの重要性を理解し、「INTEGRITY」や「Leading with INTEGRITY」といった変革を受け入れ、実行していることが一定の成果となって表れたものと考えています。
しかし、一方でGallup社のサーベイに参加している企業との比較では、当社のスコアは高いものではなく、まだ改善の余地があります。各部門に結果を共有し、その要因についてディスカッションし、それぞれの課題に対応したアクションプランの作成・実施を進めています。
今後
2024年にも同じGallup社によるサーベイを予定しています。改善活動の成果を数値として確認するとともに、エンゲージメントへの意識を企業文化として定着させることに、サーベイを継続的に実施する意義があると考えています。エンゲージメントはその国の風土や文化によって大きく異なるものであり、ローカライズした展開が必要になる一方で、当社の企業理念「The Advantest Way」やそれに含まれるコア・バリュー「INTEGRITY」はグローバル共通のものです。各部門の特性、課題に対応したアクションプランを実行しつつ、活動状況をグローバルに情報共有し、企業文化の醸成に向けて投資や取り組みを継続していくことがエンゲージメントの向上に不可欠と考えています。
エンゲージメント向上に向けた活動:全社
2018年に実施されたGallup社の従業員エンゲージメント・サーベイの結果は、自分たちの仕事に対する姿勢や考え方を振り返るきっかけとなりました。
全社では、2019年からコア・バリュー「INTEGRITY」のワークショップが全従業員向けに開催され、2021年度からはマネージャー層に向けた「Leading with INTEGRITY」ワークショップが開催されました。そうした中で、INTEGRITYの実践により企業文化の変革に貢献した人を称えあう、「The INTEGRITY Award」も創設されました。

2022年には「INTEGRITY」に関する活動をさらに推進するために、吉田社長と数名の執行役員からなる「Culture Council」を発足させ、また各ビジネス・ユニット、ファンクショナル・ユニット、リージョナル・ユニットから推薦された代表者を「INTEGRITY Ambassador」としました。このAmbassadorは、今後数年間、当社の企業文化の変革を推進するための活動を企画・発展させる役割を担っていきます。
取り組み事例1:組織横断の取り組み
「クロス1on1」は、従来の1on1とは一味変え、組織の垣根を超えてメンター(助言する側)とメンティー(助言される側)が1対1で話し合う場です。メンティーは自分の部署や仕事だけでは得られない気づきを得て、能力を引き出してもらうことができます。メンターにとっても、リーダーシップ・モデルの最も重要な要素の一つであるコーチングスキルを向上させる機会になります。
2020年にATEビジネスグループ(日本)で10名からスタートしたこの活動の参加者は回を追うごとに増えています。INTEGRITYのEMPOWERMENTを実践する取り組みと、その輪の広がりが評価され、21年度のThe INTEGRITY Awardの社長賞の1つに選ばれたこともあり、2022年度の7クール目には140名以上になりました。
取り組み事例2:可視化ツールの導入
ATEビジネスグループ(日本)では、2021年4月からエンゲージメント可視化ツールをつかってチームの状況をサーベイし、その後にチームでの対話と改善活動をするサイクルを3カ月ごとに回しています。活動の運営は、部門の内外の有志によるサーベイフィードバック活動推進メンバーがおこない、サーベイへの参加・不参加はチームの総意で決める運用としています。定期的に外部講師を招いてウェビナーを開いたり、各チームの活動事例を共有できる場を設けたりしながら活動を続けていくと、仕事がしやすくなった・この活動を続けてほしいという声が若いエンジニアからでてくるようになりました。
2022年度は企業文化の変革をグローバルでさらに推し進めるため、全世界で32名の「INTEGRITY Ambassador(IA)」が任命されました。推進チームのメンバーからも2名選出されました。IA間での定期的な交流が行われる中でサーベイフィードバック活動が事例共有され、部門を超えての展開に弾みがつきました。2021年4月に169人(22チーム)で始まった活動は、23年3月時点で277人(30チーム)となり、23年度もさらに活動の輪が広がる見込みです。
取り組み事例3:FS Global Coffee Talkによる連帯感の醸成
3年目を迎えたフィールドサービス本部(FS)のFS Global Coffee Talkは、ライブとビデオの両セッションにおいて、合計2~300名のグローバルのスタッフが参加する巨大なコミュニケーションスペースとなりました。 2022年度は、FS INTEGRITY Awardが4件、FS MVP Awardが1件の表彰案件があり、グローバルチームとしてのダイナミックな顧客活動だけでなく、特定のリージョンにいる個人(Single Contributor)による地道で、きめ細かいサポートデリバリチームに対する後方支援活動にもスポットライトが当たりました。
また、2023年度より、前年度のFS INTEGRITY Award、FS MVP Awardの受賞案件の中から、選りすぐりの活動・功績に対して、「FS Best-In-Best Award」を設け、FSマネジメントチームが表彰することにしました。年間の最優秀な活動・貢献と認められることで、CX(Customer Expectation)向上活動への積極的な参画や、FSのコアビジネスの成長に向けて、より一層のモチベーション向上に繋げられます。
さらに、セッションの司会進行役を各リージョンの持ち回りで行う形式に変更しました。セッションの運営をFSのマネジメントチームだけでなく、グローバルのスタッフも含めて、全員参加で作り上げていきます。不慣れな司会進行を温かくサポートし、より活発な会話を促す効果も見られ、本部のGlobal Teamworkの一体感をより感じられる対話の場となっています。
取り組み事例4:生産部門(日本)におけるエンゲージメント向上への取り組み
生産部門は職種や組織形態もさまざまなため、それぞれの部門に沿ったエンゲージメント向上の施策やサポートが必要と考えています。活動を積み重ねる中で、組織が活性化されていることを感じています。
2019年度から従業員がマネージャーに対して毎月業務や人間関係、健康面のコンディションやコメントを報告できるアンケートツールを活用し、2021年10月には過半数のメンバーが利用しています。23年8月からは生産本部全社員(管理職以外)を対象とする予定です。
また、コロナ禍の2020年12月から始まった、コラボレーション・ツールのアンケート機能を活用した従業員の状況や意見を聞く活動も進化しています。本部長メッセージや各部門の取り組みを紹介するオンライン配信や、従業員の感想や意見を聞く毎月のアンケート等が実施されています。メッセージ配信後のアンケートの回答は所属員の約40%から届き、従業員からでてきた疑問に対して本部長が答えるという、双方向コミュニケーションも生まれています。
こうした双方向コミュニケーションは、22年に新たなステージへと進化しました。シニア人財の提案により「テスタって何?」という講座が生まれ、生産本部の半数以上が受講するほどの反響となりました。従来の企業風土・文化、従業員同士のつながりを高めていく活動に加え、仕事と世の中とのつながりを学べたことで、働きがいのある職場への大きな一歩となる手ごたえを感じています。こうした一連の活動の結果として生産性向上につながるよう引き続き改善に努めていきます。
取り組み事例5:称賛し合う文化の醸成(Advantest Korea Co., Ltd.)
企業文化の変革のための取組の一つとして、Advantest Korea Co., Ltd.(ATK)の管理部門において、称賛し合う文化づくりのための活動を実施しました。
心理学に関する様々な調査が示しているように、称賛し、良い点を認め合うことは従業員エンゲージメント向上のために重要な要素です。その一方で、従業員の努力や貢献は十分に認識されず、称賛する文化が存在しない組織も珍しくありません。ゆえに、ATKで行った称賛し合う文化づくりのための取り組みは革新的なものであると考えています。
まず第一歩として、「称賛すること」を基本理念として浸透させ、具体的な行動に移すことを目指しました。管理部門のメンバーには、同僚に称賛を伝えるための紙のステッカーが配られ、日常業務の中で良い取り組みを行った同僚にステッカーを渡す活動を行いました。このステッカーは対面で渡され、同時に称賛や感謝の気持ちを互いに伝えるようにしました。
次に、称賛の意味とその影響について学び、話し合い、共感するための取組を行いました。定期的に称賛に関する様々な動画を視聴し、また、ワークショップを二回開催しました。オープンなディスカッションを通して、実は称賛についてネガティブな見方をしていたことがわかり、ポジティブな体験について共有することにより、互いに称賛し合うことによる良い効果について認識を共有することができました。
これらの取り組みの結果、エンゲージメントに関する社内アンケートで、称賛に関する設問では12%、成長の促進に関する設問では13%の改善が見られました。取り組みを開始する前に比べて、称賛し合う文化はより広まってきています。