ビオトープに集う冬の鳥たち
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冬の鳥たち 飛来カレンダー
鳥には、季節に応じて長距離を移動する渡り鳥と、年間を通じてほぼ同じ場所で暮らす留鳥がいます。同じ種でも渡りを行う鳥と行わない鳥がいるなど、その実態はまだ分からないことが多く残されています。渡りの解明には、鳥に足環や小型の発信機を付けて追跡する調査手法がとられています。
上図の飛来カレンダーは、ビオトープでの日頃の観察記録を元に作成しました。シベリアなど遠くから渡る鳥、北海道・東北から来る鳥のほか、近隣地域を転々とする一般には留鳥とみなされている鳥も含まれています。彼らはビオトープで冬が過ぎるのを待ち、春の長旅に向けて力を蓄えています。
ビオトープに集う冬の鳥たち
カルガモカモ目 カモ科 学名 Anas zonorhyncha
今シーズンも多くのカルガモがビオトープの池に飛来しました。様子をじっと見ていると、他の仲間にちょっかいを出すカルガモ、群れから少し離れてマイペースのカルガモなど、それぞれの個性が垣間見えます。
マガモカモ目 カモ科 学名 Anas platyrhynchos
今シーズンは数が少し多めです。雄雌合わせて8羽ほどいます。ただし、ビオトープからほど近い埼玉県では確認数が減っているようです。詳しい原因はわかっていませんが、夏場の繁殖期であるシベリアの開発による環境汚染の可能性も考えられます。
マガモのオス。頭部の緑色で識別が容易
凍結した池の上を歩くマガモのメス。カルガモはくちばしの先だけが黄色く、マガモはくちばし全体が黄色いと言われているが、個体差もある。
コガモカモ目 カモ科 学名 Anas crecca
コガモは非常に少ないです。毎年何十羽と飛来しますが、今シーズンは数羽程度しか見られません。
オナガガモカモ目カモ科 学名 Anas acuta
オナガガモは九州以北であれば普通に生息している種で、特にハクチョウ類が餌付けされているところでは多く見られます。しかし、ビオトープでは餌付けを行っていないせいかなかなか定着せず、1シーズンで1、2日程度しか姿を見ることができません。
コゲラキツツキ目キツツキ科 学名 Dendrocopos kizuki
「ギー」という鳴き声に聞き覚えがある方も多いかと思います。キツツキの仲間で、キツツキ同様に枯れ木や枯れ枝に穴をあけて巣にします。基本的に渡りはしないと言われていますが、一部の鳥は冬に温暖な地域に移るようで、ここビオトープでも冬に姿を見かけます。
カワラヒワスズメ目 アトリ科 学名 Chloris sinica
羽の一部が黄色く、飛ぶとこの黄色が映えてとてもきれいです。この時期のカワラヒワは大抵群れで行動しています。
カシラダカスズメ目 ホオジロ科 学名 Emberiza rustica
冠羽と呼ばれる頭の毛が立っているのが特徴です。去年と同様に1月に初確認できました。
ツグミスズメ目 ツグミ科 学名 Turdos naomanni
この冬は昨年12月から姿を見せ始め、1月には徐々にその数を増やしていきました。前年の同じ時期よりも少し早いペースで増えました。
タゲリチドリ目チドリ科 学名 Vanellus vanellus
冬になると、ビオトープに隣接する裸地に飛来します。大きな冠羽と胸部の白色、ネコやカモメに似た「ミュー」という鳴き声が特徴的です。タゲリは暖地では1羽か小群で行動し、積雪地などの寒冷地では群れを崩さずに生活するといわれているので、ビオトープのある群馬県東毛地域はタゲリにとって暖地なのでしょう。埼玉県や東京都などでは絶滅危惧種に指定されていますが、ここでは警戒心が低いのか撮影も容易です。タゲリが飛来すると冬の到来を感じます。
アオサギペリカン目サギ科 学名 Ardea cinerea
サギの仲間の中でも大きく、成鳥の全長は約90cmに達します。普段は水辺に生息し、長いくちばしで魚を取ります。これまでは冬にのみ確認できたのですが、2015年の夏はビオトープのある群馬R&Dセンタの敷地に営巣し、ビオトープの茂みにも時折姿を見せました。
シメスズメ目アトリ科 学名 Coccothraustes coccothraustes
秋冬に飛来し、林の周辺に生息します。太いくちばしが特徴です。ビオトープは周囲の大半が田畑で木立が少ないので、あまり多く姿を見ることがない鳥の一つです。
ホオジロスズメ目ホオジロ科 学名 Embrriza cioides
名前のとおり顔のところに白い頬線があります。関東地方では冬鳥ではないのですが、ビオトープでは毎年冬に姿を見かけます。山林などではなく、比較的人里に近いところで生活するようです。
トピックス:「ビオトープ調査結果発表会」を開催
2月29日、群馬大学社会情報学部石川研究室による「2015年度ビオトープ調査結果発表会」が群馬R&Dセンタで開催されました。
石川研究室4年生の関拓也さんからは、温暖化による草花の成長への影響と保全方法についての卒業論文を発表いただきました。その中で、ビオトープの4月の平均気温が、2003年から2015年の12年間で2.2℃上昇しているとの報告があり、地球温暖化を改めて認識しました。
石川教授からは、2001年からビオトープを導入し生態系の保全に取り組んでいる当社に対し、「環境保全へ取り組む企業のトップランナーとして、積極的に情報発信してほしい」と期待をお寄せいただきました。