サプライチェーン・マネジメント

アドバンテストでは、完全な自社による生産、サプライチェーンのすべてを請け負う企業によるEMS生産および製品の製造のみを外部企業に委託する外部委託生産の3種類による生産方式を効率的に使い分けています。Design for Supply Chain(DfSC)を合言葉に、それぞれのメリットを最大限に生かす方向を模索しながら、需給変動やBCPにも強いものづくり体制を構築しています。

自社生産の拠点である群馬工場は、製造を委託する外部企業とともに製造の全体プロセスを相互でオペレーションしていくマザー工場の機能へと大きく進化しつつあります。今では外部委託生産の割合を80%以上にまで拡大しています。

3種類の生産方式によるベストな供給体制の構築には、取引先との協力的な関係が不可欠です。アドバンテストは取引先とのコミュニケーションを大切にしながら、関係法令に基づく公正な取引関係を維持しています。

製造資本 ー Design for Supply Chain

自社での取り組み

アドバンテストは、ESG推進基本方針に「取引先の尊重」を掲げています。取引先とのコミュニケーションを大切にすることが、信頼関係の構築にも、お互いの発展にもつながると考えています。

関係法令に基づく公正な取引関係を維持するために「調達基本方針」を制定し、取引先に協力をお願いしています。また、「サプライチェーンCSR推進ガイドブック」「グリーン調達ガイドライン」を定め、人権・労働安全・環境配慮などを重視したサプライチェーン構築に向けた取り組みを進めています。

サプライチェーン・マネジメント体制

アドバンテストはサプライチェーン担当部門・グローバルSCM部門を中心に調達・製造委託・物流戦略の策定から実行、付帯業務を行っています。また、グローバルで統一した部品採用における評価基準のもと、各グローバル拠点で認定された部品の調達を適時適切に行っています。

ESG行動計画2021-2023

アドバンテストは中期経営計画(MTP2)に基づき、ESG推進基本方針を制定し、この方針に沿った「ESG行動計画2021-2023」を掲げました。サプライチェーンにおいては、CSR調達の推進のため、地球温暖化対応・人権・労働安全・公正な取引・コンプライアンスなど、取引先と連携して持続可能な社会の実現に向けて、取り組みを進めています。

公正な取引を実施するための教育

アドバンテストでは、全社のコンプライアンス教育に加え、国内グループ会社の全従業員に対する下請法の教育を実施しました。これにより、所属部署に関係なく、国内全従業員の意識レベルの向上ができました。
今後も、従業員教育の継続的と個別サポートにより、公正な取引を維持していきます。

サプライチェーンに対する取り組み

サプライヤーアンケート調査の実施

アドバンテストは、ESG行動計画2021-2023に基づき、全グループ会社の取引額の85%を占める取引先に対し、「CSRアンケート」調査を実施しました(サプライチェーン・デュー・ディリジェンス)。2022年度アンケートの内容は、RBA行動規範*、その他の国際的イニシアチブの指針に沿った「サプライチェーンCSR推進ガイドブック」の内容を中心に、昨年度同様に地球温暖化対応に向けた再生可能エネルギーの導入状況、GHG排出量報告も依頼しました。
サプライチェーン全体で社会課題に取り組めるように、取引先ごとに回答結果をまとめた資料を提供するだけでなく、評価の高い点、改善をお願いする点などについてフィードバックする取り組み、またGHG排出量の算出が困難な取引先にはセミナーを実施するなど、サプライヤー・エンゲージメントの向上を図っています。

2022年度のCSRアンケートは2023年3月に実施し、配布した企業すべてから回答を得ました。GHG排出量の算出が困難であったり、温暖化対応策が未定であったりする取引先と課題解決に向けて活動を継続していきます。
また、国内では四半期ごとに取引先のQCD*に関して評価を行い、製品の安定供給や品質の維持向上を行っています。

2022年度 CSRアンケートの実施(グローバル)

アンケート実施時期 2023年3月
セミナー実施 2023年3月
取引先へのフィードバック 2023年7月(予定)

2022年度 取引先QCD評価(国内)

評価実施 四半期ごと
(2022年7月/10月 2023年1月/4月)
改善が必要な取引先へのフィードバック 四半期ごと
(2022年8月/11月 2023年2月/5月)

* RBA行動規範:Responsible Business Alliance(責任ある企業同盟)が提唱する企業の社会的責任に関する行動規範

* QCD:品質(Quality)、価格(Cost)、納期(Delivery)の頭文字をつなげた略語

問い合わせ・通報窓口の設置

お取引先との取引において、当社従業員等に行動規範、取引契約、法令等に違反する行為がある場合、またはその疑いがある場合、当社ウエブサイトの お問い合わせ窓口 を利用し、通報をお願いしています。2022年度の苦情申し立て実績(件数)は0でした。
また、通報によって、当社が通報者および通報者の勤務する会社に不利益を与えることはありません。調査の結果、問題が認められた場合には当該行為を停止させ、再発防止策を講じています。

「パートナーシップ構築宣言」を発表

アドバンテストならびにアドバンファシリティズは、「パートナーシップ構築宣言」に賛同し、当社の「パートナーシップ構築宣言*」を2021年秋に発表しました。
「パートナーシップ構築宣言」は、サプライチェーンの取引先や価値創造を図る事業者の皆さまとの連携・共存共栄を進めることで、新たなパートナーシップを構築することを、企業の代表者の名前で宣言するものです。以下、パートナーシップ等の支援として掲げた一例です。

  • ITの活用により、サプライチェーン全体の業務効率化を推進する。
  • 品質および生産性向上に取引先と共同で取り組み、相互の発展を目指す。
  • 当社を含むサプライチェーン全体で脱炭素社会の実現を目指す。

* 「パートナーシップ構築宣言」は経団連会長、日商会頭、連合会長及び関係大臣(内閣府、経済産業省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省)をメンバーとする「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」において創設。

取引先とのESG推進事例

アドバンテストは「パートナーシップ構築宣言」の理念に賛同し、取引先と共にさまざまなESG活動を推進しています。

環境配慮型パレットの導入

部品の倉庫業務を委託している、株式会社アルプス物流様からの提案を受け、群馬工場では2022年に部品保管用に環境配慮型パレットを導入しました。このパレットは、海洋プラごみを配合して作られたもので、環境省が実施している海洋プラごみ削減の取り組み「プラスチックスマート」のロゴマークが側面に印字されています。このパレットを使うことで、当社は物流の面からも海洋プラスチックごみ削減に貢献できるようになりました。

エコドライブで東京都から表彰

当社の製品等をエコドライブで運送している、武蔵関運輸株式会社様が、2022年度「東京都貨物輸送評価制度」(貨物運送事業者のエコドライブ等の努力を実走行燃費で評価する)において、2年連続最上位評価の「三つ星」を受賞、さらに最上位評価のトップ5に選出されました。アドバンテストは、バリューチェーンにおけるCO2削減を重要テーマの1つに掲げています。取引先がこのような賞に輝いたことは、サプライチェーン排出量への取り組みを推進している当社にとって、ESG推進の更なる原動力となりました。

ピンクリボン運動の推進/啓もう活動を実施

乳がんの早期発見/診断/治療を啓発・推進する国際的な運動「ピンクリボン運動」に賛同し、2022年秋にビジネスパートナーと共同でピンクリボン運動の推進・啓もう活動(①乳がん啓発セミナーのオンデマンド配信、②ウォーキングイベント開催、③募金活動)を実施しました。

ウォーキングイベントでは、シンボルカラーであるピンク色のタオル(当社およびビジネスパートナーのロゴ入り)を製作し、参加した従業員に配りました。寄付活動では、93,752円を認定NPO法人 J.POSHへ寄付できました。また、環境配慮材料のバイオマスレジンで作ったピンクリボン運動のオリジナル・ピンバッジを製作し、寄付した従業員に記念品として渡しました。

事業継続とSDGs活動への相談事例

2021年11月に、アドバンテストの協力会社である株式会社明成様から事業継続、SDGsへの取り組み等の相談がありました。アドバンテストでの取り組みや世の中の状況を伝え、自社のなりたい姿と合致することが重要と話しました。株式会社明成様内で検討を重ねた結果、世の中への貢献意識が高まっていき、以下の取り組みにつながりました。

  • CoCoLoプロジェクト*に参加し、工場の屋根に太陽光発電を導入することで脱炭素や社会貢献を推進
  • SDGs宣言書を開示
  • 女性比率の高さをより生かすため、女性リーダー育成教育を推進

* CoCoLoプロジェクト:ウェストグループが企業が生み出した環境価値をJ-クレジット制度*によってクレジット化して様々な寄付活動に活用することでCO2削減と地方創生を推進する活動。

* J-クレジット制度:省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を、クレジットとして国が認証する制度。

調達への取り組み

調達リスクの対策

ロシアのウクライナ侵攻や中国のロックダウンによる物流の停滞・混乱に加え、気候変動・自然災害の発生など、今まで経験したことのないサプライチェーンの混乱が生じています。今まで進めてきた工場の見える化(部品調達から生産、出荷に至るまでのプロセスと情報の可視化)に加え、所要量をリアルタイムで予測し、迅速かつ適切に対応する体制を整備しました。さらに、サプライヤーとのパートナーシップ契約およびトップレベルでの情報交換、EMSとの連携強化などをグローバル拠点で、各役員が陣頭指揮を行っています。

BCPの観点から、部品の調達における不測の事態に備え、当社では原則として複数社からの調達を推進しています。
当社調達先、製造拠点のBCPマップを作成し、災害時における情報収集、対策検討のスピードアップを図りました。

責任ある鉱物調達

アドバンテストは、米国金融規制改革法1502条(紛争鉱物条項)の対象外ですが、自主的に紛争鉱物問題に取り組んでいます。2013年から当社は毎年、取引先に対して、RMI*帳票(紛争鉱物報告テンプレート(CMRT))による鉱物調達の調査を実施しています。2022年度も、取引先に対する調査を実施、CMRTに記載の製錬所/精製所とRMI開示情報との照合を行い、以下の結果となりました。

調査票(CMRT)回収率 99%
・精製所/製錬所総数 351
・コンフォーマント認証を受けた精製所/製錬所数 229
・コンフォーマント認証未取得の精製所/製錬所数
 (取得中を含む)
122

集計の結果、コンフォーマント(適合)製錬所の比率は65.2%でした。
コンフォーマント(適合)製錬所からの調達を引き続き要請し、確認できていない取引先には、継続的に協力をお願いしています。

2023年度は、体制を拡充して「紛争鉱物不含有を確認したサプライヤーの割合100%」を目指します。

* RMI:Responsible Minerals Initiative