イノベーションへの取り組み

アドバンテストは、「先端技術を先端で支える」べく、半導体産業、エレクトロニクス産業、情報通信産業を支える計測技術領域において、新たな価値創造につながる基盤技術や製品の研究開発を進めています。これら研究開発活動の成果は、当社が事業の軸足を置く半導体バリューチェーンの進化に貢献しています。またそれにとどまらず、高性能かつ経済性を伴った優れた半導体の普及・社会実装拡大を通じ、最終的に「安全・安心・心地よい」社会の実現にも貢献しています。このように当社の事業活動においては、研究開発活動が当社自身の成長のみならず社会貢献を拡大していくための直接的な源泉となることから、当社は研究開発を最も重要な投資領域と位置付け、長期にわたり多額の資本を投下しています。

イノベーションに関する取り組みの要旨

当社は、半導体関連のすべての顧客に対し、価値の高い世界最先端・最高峰の半導体テスト技術を提供可能な企業であり続けたいと考えています。当社は、世界有数の半導体メーカーやIT企業を含む世界のテクノロジー・リーダーを数多く顧客としており、これら顧客の将来の成功が当社自身の成功につながります。一方で、それら顧客から寄せられる高い期待に応える製品やソリューションを生み出し続けるためには、技術的な壁をいくつも乗り越える必要があり、そのためには5~10年の時間軸を伴った長期持続的かつ大規模な研究開発マネジメントが不可欠です。当社の研究開発マネジメントは、顧客との緊密なコミュニケーションを通じ収集した今後の技術ニーズや投資時期の見通しや、半導体関連市場における将来の技術動向や需要予測等に関する市場調査に基づき策定した、中長期的なロードマップを基本に展開しています。

また、医療機器をはじめとした半導体バリューチェーン外に向けても、過去蓄積した電子あるいは光計測技術を活用した斬新な計測ソリューションの開発を行っています。

イノベーションを通じたサステナブルな社会実現に対する直接的な貢献拡大

アドバンテストでは、すべての製品に対して製品環境アセスメントを実施しています。また、脱炭素社会への貢献の観点から、消費電力効率等の環境性能向上を達成することを新製品の研究開発プロセスに組み込んでおり、サステナブルな社会の実現への貢献は事業活動と一体となっています。

直近年度における主な基盤技術開発

  • 光計測、光電集合デバイステストシステムに用いる光半導体デバイス、光源および光集積回路の開発
  • 超高感度磁気計測に対応するセンサ技術、アルゴリズム技術および応用技術の開発
  • 半導体・部品テストシステムに用いる、ピン・エレクトロニクス、パターン・タイミング発生および、DCテストリソース等の要素技術
  • 半導体・部品テストシステムに用いる低歪デバイス、高速高周波デバイスなどの化合物半導体の開発
  • 多値伝送を含む次世代のプロトコルや光信号インタフェースのテストが可能な技術の開発
  • 超高速信号のタイミングや波形品質を多数ピン同時に調整可能なキャリブレーション手法の開発
  • 設計工程からテスト工程まで、半導体のサプライチェーン全体にわたるデータ連携および解析手法の開発

多様な顧客ニーズに応じるテスト・ソリューション

V93000シリーズ

V93000

V93000

デバイスの高速化、高機能化が進む現代の半導体業界において、テスト・システムには、低テスト・コストを維持しつつ、より優れたソリューションを提供することが求められています。また、革新的なテクノロジーだけでなく、使用寿命が長く拡張性の高い、投資効率に優れたシステム・アーキテクチャも必要です。

テスト・システム「V93000」は、スケーラブルなプラットフォーム・アーキテクチャにより、低コストのIoTデバイスから、高機能の車載デバイスや高集積度のマルチコア・プロセッサなどのハイエンド・デバイスまで、広範囲のデバイスをテストできます。「シングル・スケーラブル・プラットフォーム」というコンセプトを評価いただき、V93000は先進的なIDM、ファブレス、ファウンドリー、OSAT各社に広く採用されており、新たなテスト・ソリューションを開拓し続けています。

T6391テスト・システム

T6391

T6391

ディスプレイ・ドライバIC(以下DDI)は、スマートフォンやテレビなど、さまざまな電気製品に使用されるディスプレイの動作を制御するICです。「T6391」は、世界各地に2,500台以上のインストール・ベースを有する、DDIテストの業界標準機である「T6300シリーズ」の最新機種として、多ピン化、高速インタフェース化、多機能化といった、次世代DDIの技術トレンドに応えた最新のテスト・プラットフォームです。

「T6391」用のパーピン・デジタイザ/コンパレータ・モジュール「LCD HP」は、測定精度が従来製品比5倍に向上し、ハイエンド・スマートフォンやAR/VRアプリケーション向けの高性能DDIのテストに最適です。また、±40Vまでの高電圧試験にも対応し、最新の車載用DDIの高信頼性試験にもご利用いただけます。

inteXcell

inteXcell

inteXcell

高速で大容量化が進む次世代メモリ・デバイスへのテスト・ソリューションは、高速対応と多数個同時測定だけでなく、スケーラブルな試験環境や自動化への対応、そして省スペース化がますます重要となってきます。

アドバンテストは、フットプリントを極限まで削減したメモリ・テスト・セルの新シリーズ「inteXcell」の販売を開始しました。高密度化、省電力化、インタフェースの高速化といったメモリ・デバイスの後工程テストの課題に対し、設計評価から量産まで一つのプラットフォームで対応します。inteXcellは、フレキシブルなシステム構成、広範なテスト・カバレッジ、高スループットのハンドリングを統合した、業界の先駆けとなるテスト・ソリューションです。

Advantest Cloud Solutions™ (ACS)

ACS

アドバンテストは、さらなる飛躍への価値探求のため、テスト・ソリューションの拡充や新しいテクノロジーの導入によるソリューションの拡張を進めています。その一例として、アドバンテストでは、お客さまの半導体をつくる工程で生成されたデータと、半導体テスト時のデータを統合して分析することで新たな価値を創造する、Advantest Cloud Solutions™ (ACS)を推進しています。

ACSエコシステムは、お客さまが工程内のデータを最大限に活用したスマートな半導体プロセスを実現するお手伝いをします。ACSエコシステムは、統合されたデータ・プラットフォームをベースとする、アドバンテストおよび提携企業が提供する先進的なクラウド製品とサービスの集合体で、お客さまは最先端のテスト・ソリューションを手に入れることができます。リアルタイムの機械学習で常に最適化されたソリューションによって、半導体バリューチェーン全体の生産性を簡単かつ自動的に高めることができます。

システム・レベル・テスト・システム

T5851-STM16G

T5851-STM16G

アドバンテストでは、新たなテスト・ソリューションとして、最終製品の性能を保証するシステム・レベル・テストに対応した製品を開発しています。システム・レベル・テストおよびバーンイン・テストは、特に量産試験において需要が高まっています。

E5620

E5620

E5620

多次元観察・測長SEMでは、高精度・高スループット欠陥レビュー性能の新製品「E5620」の販売を開始し、次世代フォトマスクの生産品質向上とマスク製造のTAT(Turn Around Time)短縮に大きく貢献しています。

E5620は安定性の高いイメージキャプチャ技術を実装し、マスク検査システムからインポートした欠陥座標の位置データを自動的に画像化します。次世代のEUV露光向けマスクのレビュー用に、従来製品から多くの改善が施されています。

光超音波顕微鏡

Hadatomo™

WEL5200

光超音波顕微鏡では、Hadatomo™シリーズで測定した皮膚内部のメラニンと血管網、皮膚構造の3つのデータを重ね合わせて3D画像表示できる3D画像ビューワ「Euclid」をリリースしたほか、Hadatomo™ Zでも新たな研究実績を積み上げています。

テラヘルツ分光・イメージング・システム

TAS7500IM、TAS7500SP

左)TAS7500IM
右)TAS7500SP

テラヘルツ分光・イメージング・システムは、医薬品、ケミカル品、通信用材料など様々な分野での非破壊解析を、テラヘルツ帯域に特有の操作、環境設定を行うことなしに、容易にかつ高速に行うことができ、お客さまにご利用いただくシーンを広げています。

社外との連携

アドバンテストは、産学連携等、外部との協業によるイノベーションの推進、人財育成への取り組みを通じても、半導体テストはもちろん、半導体バリューチェーン全体への貢献を目指しています。

上記のほか、東京大学システムデザイン研究センター(d.lab)に設置された「アドバンテストD2T寄附講座」を通じ、テスト設計の専門家となりえる人材の育成とSoC(システム・オン・チップ)の設計に関する研究を支援しています。

東京大学と共に、「先端システム技術研究組合(略称ラース、以下 RaaSと表記*1)」(理事長 黒田 忠広 東京大学大学院工学系研究科附属システムデザイン研究センター長 教授)において、2023年4月1日から新たな先端システム技術の研究開発への取り組みを始めています。東京大学、アドバンテスト、凸版印刷、日立製作所、ミライズテクノロジーズ、理化学研究所の6組合員で活動し、組合員が共同利用できる次世代先端半導体開発プラットフォームを研究開発します。

*1 RaaS
先端システム技術研究組合の英語名のResearch Association for Advanced Systems の頭文字を繋げて作った略語。半導体を部品(製品)としてではなく、システムの中核知識(サービス)として提供することを標榜し、サービスとしての研究(Research as a Service)の意味も込めてラースと読む。