製品安全・品質への対応

製品の企画から、開発を完了して製造部門に移管するまでのプロセスでは、マーケティング、営業、品質保証、製造、サービスといった様々な部門との連携が必要です。ここでは、お客さまの満足度向上のために、アドバンテストが製品の安全性と品質向上にどのように向き合っているかについて説明します。

研究開発から製造までのプロセス

製品の安全・品質の確保への取り組み

アドバンテストは、製品の「安全性」を、より高度なものとすることを目的として、1995年5月に「アドバンテスト製品安全憲章」を制定しました。

上記目的を達成するため、「製品安全推進規定」を制定し、当社製品の安全性向上を推進する組織として全社委員会の設置を定めています。同委員会は、1995年5月から現在まで製品の安全性向上のための活動に取り組んでいます。

2022年度は、主力13製品に関して、社外の専門機関に安全性・耐久性検査を依頼しました。
その結果、安全仕様の改修や改善が必要と指摘された案件はありませんでした。
なお、2021年度は、製品安全推進規程に示された基準に違反する事例が1件ありました。本事例に対しては規制に適合するため製品の設計変更にて是正しました。

アドバンテストでは製品をワールドワイドで販売する上で必要となるEMC法規制遵守のために10m法大型電波暗室(EMCセンタ)を運用しています。
特に、欧州(CEマーキング)や韓国(KCマーク)では厳格なEMC法規制があります。
またアメリカでも製品運用でノイズによる周辺環境悪化に伴う訴訟リスクが大きく、また顧客要求もあることから、米国EMC法規制(FCC)に沿った対応を行っています。
EMCセンタでは、試験所の運用を規定した国際規格であるISO17025を取得し、EMCセンタ職員についてもiNARTE(The International Association for Radio, Telecommunications and Electromagnetics)のEMCエンジニア資格保有者により運営されており、社内で国際的に認められるEMC認証試験を行うことができます。
またEMCセンタ施設は製品を搭載するためのターンテーブル直径8m、耐荷重10t電源容量トータル148kVAを供給可能な3相電源、冷却水を供給できる設備を有し国内でも数少ない大型の産業機器の試験が可能な環境を整えています。

EMC法規制は出荷国毎に最新の法規制動向を注視する必要があります。アドバンテストではKEC(一般社団法人KEC関西電子工業振興センター)でのワーキング活動に参加して情報を収集しています。また、SEAJ(一般社団法人日本半導体製造装置協会)を通じて、半導体製造装置業界にEMC法規制情報の提供を行っています。

アドバンテストグループ品質方針

発想の原点は『お客様の満足度』

  • (1) 製品・サービスのライフサイクルを通じて品質を維持し、バリューチェーン全体でお客さまのご要求を満たします。
  • (2) 法令・規制を遵守するとともに、品質マネジメントシステムの継続的改善によりビジネスプロセスを最適化することで、企業の社会的責任を果たし、ステークホルダーの満足度向上に努めます。
  • (3) お客さまにご満足いただける技術・製品・サービスをタイムリーに提供します。

品質管理体制

アドバンテストは、「発想の原点は『お客様の満足度』」を品質方針として、国際規格である ISO9001 に適合した品質マネジメントシステムを全社的に構築し、運用しています。

トップマネジメントによる統括のもと、品質保証本部長を責任者として全社的な枠組みで推進組織を整備し、システムの維持・改善に努め、『お客様の満足度向上』を目指しています。また、独立した内部監査の仕組みを構築し、定期的に内部監査を実施することによって、継続的にシステムの維持・改善を図っています。

さらに、グローバルな品質マネジメントシステムを強化するため、グループ全体(世界8カ国、21サイト)においてシステムの統一を進め、2018年4月25日付けで「ISO9001グローバル統一認証」を取得しました。2022年度では、グループ全体で世界8カ国、24サイトに拡大しています。

本品質管理体制により2022年度の製品リコール数は0でした。
今後も、この枠組みを維持しながら、品質管理体制の強化、発展を目指していきます。

ISO9001グローバル体系図

設計品質の向上に向けた「デザイン・レビュー制度」

アドバンテストの製品には、常に高機能・高性能・高品質が要求され、これを実現するための回路は日増しに大規模化、複雑化しています。その一方で開発工期の短縮も求められます。お客さまの要求に応えるには、設計の上流段階での品質のつくり込みと早期の問題抽出が最重要と考え、実現する仕組みとして、2008年より新たなデザイン・レビュー制度を導入しました。

  • 製品開発開始時に、プロジェクト・リーダーがデザイン・レビューの実施計画を立案し、確実にデザイン・レビューを行う仕組みに変更。
  • 指摘事項を「見える化」し、担当者やプロジェクト・リーダーに加えて品質保証部門も残件を監視してフォローアップ漏れが防止できる仕組みに変更。
  • 社内の有識者を専門分野ごとに組織化し、関連したデザイン・レビューには有識者が参加する「デザイン・レビュー・マイスター制度」を導入。これにより、デザイン・レビューでの検出率を高めるとともに、技術継承や教育効果も得られる運用を推進。

活動の結果、設計段階での問題抽出率の向上により後戻りが減少し、開発遅延を最⼩限に抑えるなど成果を挙げています。新しいデザイン・レビューは、設計品質向上と開発⼯期短縮の成果を挙げた⼀⽅で、設計者本⼈が検出すべき問題が、デザイン・レビューや後⼯程に流出してしまうという課題も散⾒されるようになりました。

当社では、これらの流出した問題の分析とフィードバックを行い、仕組みを改善していますが、今後はデザイン・レビュー前の事前確認の徹底を通じて、より高い設計品質を実現するための設計プロセスを構築していく計画です。

研究開発プロセスとデザイン・レビュー

部品品質向上活動(SQE活動)

当社グループでは、「製品の品質を支える部品、その一点一点が高い品質であることが必須」という考えから、サプライヤーにご協力いただき、部品採用段階から SQE (Supplier Quality Engineering) 活動を展開しています。SQE活動とは、専門家チームによる部品品質向上を目指す活動です。当社の製品には、航空機(20万~300万点)に匹敵するほどの部品が使用されているため、部品品質を確保する活動が極めて重要となります。

SQE活動のコンセプトは、以下の3つです。

  • よい部品の選定:複数の同一性能の部品について、社内で良品解析や評価等を行い、よりよい品質の部品を選定する。
  • PDCAによる品質改善:部品の設計段階から製造段階にいたるまでPDCAサイクルによって、量産前に改善を実施、それ以降も継続して活動する。
  • 裕度を確保した設計の推進:部品の規格よりも、裕度をもった設計を基準化し推進する。

製品開発段階からSQE活動を展開することにより、製造工程における部品起因のトラブル、部品問題の市場流出リスクを低減し、ロスの大幅な低減に貢献しています。この成果は当社製品のエンドユーザ工程内での安定稼働という形でも表れ、高い安心感にもつながってきます。
また、部品起因の不具合発生を低減することで、交換され棄却される部品が減り、環境負荷低減にも寄与しています。

アベイラビリティ

アドバンテストは、「故障しにくく、故障しても直ぐに復旧」できるアベイラビリティの⾼い製品をお届けすることで、お客さまの⽣産性向上に貢献します。アベイラビリティとは、製品の信頼度を表す指標の一つで、「ある期間に装置が稼働可能な時間の割合」です。当社グループでは、MTBF*1向上(装置をある時間使用しても故障しないこと)、MTTR*2低減(故障した時に修復しやすいこと)に取り組むことで、高いアベイラビリティを提供し、お客さまの満足度の向上を図っています。

*1 MTBF: Mean Time Between Failure 故障から次の故障までの平均的な間隔

*2 MTTR: Mean Time To Repair 修理に費やされる平均的な時間

ソフトウェアの品質向上に向けた取り組み

アドバンテストは、ソフトウェアの品質向上に継続的に取り組んでいます。テスト・システムやハンドラなどの装置を制御するためのソフトウェアに対しては、品質保証部門が開発工程計画を確認後、開発と並行して成果物である仕様書をリアルタイムに審査し、開発上流工程の段階から品質の確保に努めています。審査は開発終了までに実施され、品質基準に達しているかを確認後、出荷しています。

当社は、ソフトウェアの品質を向上するためにAutomotive SPICE*1の開発プロセスへの組み込みを推進しています。2021年には、V93000のシステム・ソフトウェアSmarTestに対し、Automotive SPICE Level1認証を取得しました。また、T2000のシステム・ソフトウェアに対してもAutomotive SPICE Level2認証取得に取り組んでいます。当社はこの活動を通じて、よりよい製品のタイムリーなデリバリを実現しています。

*1:自動車業界標準のソフトウェア開発プロセス・モデル